一般社団法人日本LD学会 第29回大会(兵庫)

会長挨拶

第29回大会(兵庫)の開催にあたって
発達障害のある子どものための未来の学校づくりについて考えよう

 

第29回大会会長

宇野宏幸(国立大学法人兵庫教育大学)
 

 通常学級の特別支援教育が始まって、発達障害の子どもがその対象となったことは、大きな転換点でした。これまでに、特別支援教育コーディネーター担当者の指名、通級指導教室の拡充などの体制づくりが図られて、一定の進捗を見ているところです。この間に、本学会の大会や機関誌で発表される研究の領域は、LDにとどまらず、ADHDやASDなどの発達障害、医療との連携、地域支援、授業づくり・学級経営など多岐にわたるようになりました。特別支援教育士の役割を果たしていく中でも、これら領域の力量が求められているところです。

 この一方で、学校では思うように支援体制づくりが進まないという声も聞かれます。発達障害への社会的な認識が高まったおかげで、これまでと比べても相談や支援の依頼は格段に増えていると思います。これは喜ばしいことではありますが、学校で個別対応していくのは、やはり限界があります。また、不登校状態の子どもの一定割合に発達障害があることは知られつつあるのですが、生徒指導との連携に課題があることも珍しくありません。ここには、指導観の違いも垣間見られます。

 ある程度の体制が整った今こそ、特別支援教育を基盤に据えた、すべての子どものための学校づくりを考える潮時かもしれません。学習者主体の学びを実現していくにあたっても、本学会が焦点を当ててきた学び方の違い、学び方の多様性、多重知能などの視点が大切です。このような視点を学校づくりにどう取り入れるのか、例えば、UDLを取り入れた授業を校内や地域にどう広めるのか、も考えないといけないでしょう。学校管理職のリーダーシップも期待したいところです。

 特別支援教育を大切にした、少し未来の学校教育について議論できることを願っています。大阪にて、多くの皆様のご参加をお待ちしています。