11:00 〜 11:15
[R5-08] CIコンドライト及び小惑星リュウグウ試料のカンラン石主要・微量元素組成から推測する起源物質
キーワード:CIコンドライト、小惑星リュウグウ、カンラン石、アメーバ状カンラン石集合体(AOA)、コンドルール
はじめに:小惑星リュウグウ試料中に微小量の無水ケイ酸塩(特にカンラン石)が発見されたことから、リュウグウ母天体において、少量の前駆物質がその後の水質変成を免れたことが示唆されている[1]。これら無水鉱物の起源は、酸素同位体組成からアメーバ状カンラン石集合体(AOA)様物質かコンドルール様物質と考えられている [2,3]。我々はCIコンドライトのIvuna隕石とOrgueil隕石を小惑星リュウグウ試料と同様の方法で分析し、これらの角レキ化隕石にも同様の無水ケイ酸塩が存在することを見出したが[4]、今回もう一つのCIコンドライトであるAlaisのカンラン石粒を分析したので、その分析値も合わせて、CIコンドライト/リュウグウ試料中のカンラン石組成と起源の制約について報告する。
結果:Alaisのカンラン石粒は、Mgマップによって明らかなように、Feに富む層状ケイ酸塩マトリックスを持つ岩相中に散在する鉱物片(~20ミクロンの大きさ)または凝集体として存在する。ほとんどのカンラン石粒は10ミクロン以下の大きさであるため、鉱物モード組成は0.1%以下である。カンラン石粒の形態は様々で、角ばったものもあれば丸みを帯びたものもあるが、常に薄い(<0.5ミクロン)Feに富んだリムを伴っている。これらの薄いリムを除けば、カンラン石組成は主要元素、微量元素ともに均質である。カンラン石組成はFo99に集中しており(ほとんどがFo99.3-98.5)、まれにFeに富むカンラン石(Fo~92.3)が存在する。MnO含有量は0.0-0.7 wt%であるが、LIMEカンラン石(MnO/FeO>1 in wt%)が1%程度存在する。Cr2O3は0.03-0.67 wt%である。ほとんどのカンラン石粒はCaに乏しいが(CaO: <0.1wt%)、一部のFeに富むカンラン石(Fo~98.5)はわずかに高いCaを含む(~0.2wt% CaO)。
考察と結論:Alaisのカンラン石組成は、Ivuna、Orgueil、そしてリュウグウ試料と、組織と鉱物組成の両方で顕著な類似性を示し、CIコンドライトとリュウグウ試料が共通の起源を共有していたことが再確認できた。Alaisのカンラン石存在量はIvunaと似るが、Orgueilとリュウグウ試料よりも明らかに高い。この違いは、我々が分析したAlaisの研磨試料が小さかったためのサンプルバイアスの可能性があるが、母天体での角レキ化過程において、カンラン石を含む岩相の量比が多い(水質変成[1]が弱い)部分を起源とする岩片を多く含んだ可能性も示唆される。これらCIコンドライト/リュウグウ試料中のカンラン石の主要・微量元素含有量をプロットすると、明らかに2つの成分があることがわかった。例えば、MnとCrの間には正の相関があるが、明らかに2つのトレンドを示している[4]。1つは比較的Mnに富みCrに乏しいトレンド(MnO: 0-2 wt%、Cr2O3: 0-0.5 wt%)で、酸素同位体分析[2,3]からAOA起源を示唆する。LIMEカンラン石粒は、Mnに富む末端がこのトレンドに沿ってプロットされている。これとは対照的に、他のトレンドは比較的Crに富み、Mnに乏しく(MnO: 0-0.5 wt%、Cr2O3: 0-0.6 wt%)、このような組成は酸素同位体データからコンドルール起源を示唆する [2,3]。同様に、Fa含有量とCaO量は2つの組成クラスターを示す。1つは比較的Mgに富み(Fo99.3-98.8)、Caが低い(CaO:<0.05 wt%)もので、もう1つは比較的Mgに乏しく(Fo98.8-98.2)、Caが高い(CaO:~0.2 wt%)ものである。前者はAOA起源で、後者はコンドルール起源と考えられる。これらのCI/リュウグウ前駆物質の寄与を母天体の構成要素として考えると、AOA様物質の寄与がより大きく見え、母天体の形成領域と関係している可能性がある。また、カンラン石の大きさと組成の間に明確な相関は見られないことから、これらの前駆物質は母天体集積時に等しく取り込まれたと考えられる。
参考文献:[1] Nakamura T. et al. (2022) Science 10.1126/science.abn8671. [2] Liu M.-C. et al. (2022) Nature Astron., 10.1038/s41550-022-01762-4. [3] Nakashima D. et al. (2023) Nature Comm., 14:532. [4] Mikouchi T. et al. (2022) 85th Ann. Meeting of MetSoc, #6180.
結果:Alaisのカンラン石粒は、Mgマップによって明らかなように、Feに富む層状ケイ酸塩マトリックスを持つ岩相中に散在する鉱物片(~20ミクロンの大きさ)または凝集体として存在する。ほとんどのカンラン石粒は10ミクロン以下の大きさであるため、鉱物モード組成は0.1%以下である。カンラン石粒の形態は様々で、角ばったものもあれば丸みを帯びたものもあるが、常に薄い(<0.5ミクロン)Feに富んだリムを伴っている。これらの薄いリムを除けば、カンラン石組成は主要元素、微量元素ともに均質である。カンラン石組成はFo99に集中しており(ほとんどがFo99.3-98.5)、まれにFeに富むカンラン石(Fo~92.3)が存在する。MnO含有量は0.0-0.7 wt%であるが、LIMEカンラン石(MnO/FeO>1 in wt%)が1%程度存在する。Cr2O3は0.03-0.67 wt%である。ほとんどのカンラン石粒はCaに乏しいが(CaO: <0.1wt%)、一部のFeに富むカンラン石(Fo~98.5)はわずかに高いCaを含む(~0.2wt% CaO)。
考察と結論:Alaisのカンラン石組成は、Ivuna、Orgueil、そしてリュウグウ試料と、組織と鉱物組成の両方で顕著な類似性を示し、CIコンドライトとリュウグウ試料が共通の起源を共有していたことが再確認できた。Alaisのカンラン石存在量はIvunaと似るが、Orgueilとリュウグウ試料よりも明らかに高い。この違いは、我々が分析したAlaisの研磨試料が小さかったためのサンプルバイアスの可能性があるが、母天体での角レキ化過程において、カンラン石を含む岩相の量比が多い(水質変成[1]が弱い)部分を起源とする岩片を多く含んだ可能性も示唆される。これらCIコンドライト/リュウグウ試料中のカンラン石の主要・微量元素含有量をプロットすると、明らかに2つの成分があることがわかった。例えば、MnとCrの間には正の相関があるが、明らかに2つのトレンドを示している[4]。1つは比較的Mnに富みCrに乏しいトレンド(MnO: 0-2 wt%、Cr2O3: 0-0.5 wt%)で、酸素同位体分析[2,3]からAOA起源を示唆する。LIMEカンラン石粒は、Mnに富む末端がこのトレンドに沿ってプロットされている。これとは対照的に、他のトレンドは比較的Crに富み、Mnに乏しく(MnO: 0-0.5 wt%、Cr2O3: 0-0.6 wt%)、このような組成は酸素同位体データからコンドルール起源を示唆する [2,3]。同様に、Fa含有量とCaO量は2つの組成クラスターを示す。1つは比較的Mgに富み(Fo99.3-98.8)、Caが低い(CaO:<0.05 wt%)もので、もう1つは比較的Mgに乏しく(Fo98.8-98.2)、Caが高い(CaO:~0.2 wt%)ものである。前者はAOA起源で、後者はコンドルール起源と考えられる。これらのCI/リュウグウ前駆物質の寄与を母天体の構成要素として考えると、AOA様物質の寄与がより大きく見え、母天体の形成領域と関係している可能性がある。また、カンラン石の大きさと組成の間に明確な相関は見られないことから、これらの前駆物質は母天体集積時に等しく取り込まれたと考えられる。
参考文献:[1] Nakamura T. et al. (2022) Science 10.1126/science.abn8671. [2] Liu M.-C. et al. (2022) Nature Astron., 10.1038/s41550-022-01762-4. [3] Nakashima D. et al. (2023) Nature Comm., 14:532. [4] Mikouchi T. et al. (2022) 85th Ann. Meeting of MetSoc, #6180.