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[IIYS-02] 雄ヤギの雌化を引き起こす原因遺伝子の探索
兵庫県下にて3世代にわたり泌乳する雄ヤギが発見され,秋田県下においても同様の表現型を呈する個体が発見された.これらのヤギでは機能的な精巣があるにも関わらず乳房が肥大化しており,乳汁分泌も認められた.泌乳後は乳房が萎縮し,血中テストステロン濃度の上昇が確認された.本研究では,この表現型を引き起こす原因候補遺伝子としてSRY,AR,CYP19A1遺伝子を解析した.SRY遺伝子はY染色体上に存在する性決定遺伝子の一つであり,この遺伝子のノックアウトにより雌化することが知られている.AR遺伝子はX染色体上に位置し,フレームシフト変異やナンセンス変異により雌化することが報告されている.CYP19A1遺伝子はヤギ第10番染色体に存在し,ヒトではその重複や欠失により女性化乳房や精巣機能不全が発症する.そこで,SRY,AR遺伝子に対してはCDS領域を対象とした多型探索を行い,CYP19A1遺伝子に対してはCDS領域およびプロモーター領域を対象にゲノム構造を調査した.その結果,SRY,AR遺伝子では患畜に特異的なDNA多型は同定されず,これらの遺伝子は雄ヤギの雌化には関与しないことが示唆された.一方,半定量的PCRの結果,患畜特異的にCYP19A1遺伝子のプロモーター領域のコピー数が増加していることが示唆され,これによるCYP19A1遺伝子の過剰発現が雄ヤギの雌化を引き起こすと考えられた.