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[VIII29-27] マウス乳腺上皮細胞における温度受容体TRPV4とβ-casein発現との関連性
【目的】暑熱ストレスは乳牛の体温維持機構を破綻させ,体温上昇や代謝異常を引き起こし,結果として乳量を低下させる.しかし,乳汁を合成・分泌する乳腺組織,特に乳腺上皮細胞に暑熱ストレスがどのような影響を及ぼし,最終的に乳量低下を引き起こすのか,その詳細な機構は解明されていない.本研究では,熱ストレスによる温度受容体TRPV4の活性化がミルクタンパク質β-caseinおよびストレス応答機構UPR因子の発現に影響を及ぼすかを検討した.【方法】暑熱環境下(39℃)で培養したマウス乳腺上皮細胞株HC11を用いて,β-casein,TRPチャネルファミリー遺伝子,およびUPR関連遺伝子の発現量をqPCR法によって検討した.また,TRPV4アゴニストを添加し37℃で培養したHC11において,39℃と同様の変化が生じるかをqPCR法によって確認した.【結果】37℃で培養したコントロールに比べ39℃ではβ-casein,TRPV4,およびUPR因子ATF6,XBP1,GRP78の遺伝子発現が有意に増加した.また,TRPV4アゴニストの添加によって37℃で培養したHC11においてもβ-casein,ATF6,XBP1の遺伝子発現が有意に増加することが明らかとなった.以上の結果より,39℃の熱ストレスがTRPV4およびUPR因子を介してHC11のβ-casein遺伝子の転写能を増加させることが示唆された.