日本畜産学会第131回大会

講演情報

授賞式・受賞者講演

授賞式・受賞者講演

2023年9月19日(火) 15:00 〜 16:00 第I会場 (講堂)

[AW-08] 高度集約型反芻家畜生産における副産物資材の飼料価値に関する研究

*LIU CHUNYAN1,2 (1. 日本大学、2. 一般社団法人日本科学飼料協会)

【目的】本研究は、食糧問題や環境問題を改善するために、低・未利用資源の飼料化に関する検討を行った。特に高度技術集約型の畜産に適用可能と考えられる食品製造副産物を3種類取り上げてそれら飼料価値の評価を行うとともに、新飼料資源の技術開発における課題を検討した。 【研究結果】(1)高エネルギー飼料と考えられるダイコン残渣(DK)の飼料価値評価を行った。ルーメン細菌を用いた嫌気的バッチ培養試験ではDKは穀類と同等程度の消化発酵性を示し、また温室効果ガスであるメタン削減効果も示された。次にヤギを用いた消化試験では、DKの乾物消化率(DMD)と可消化養分総量(TDN)はそれぞれ87および79%と高い値を示した。また水分含量が高い(94%)にもかかわらず高い採食性を示した。またルーメン内特性や血液性状から見た安全性には、特に問題は見られなかった。 (2)高エネルギー・高繊維質飼料と考えられるパイナップル残渣(PR)の飼料価値評価をウシの消化試験により実施した。PRのDMDおよびTDNはそれぞれ71%および70%と繊維質飼料としては高い値を示し、繊維(NDF)消化率も64%と良好であった。また咀嚼時間から求めたPRの粗飼料因子は一般的な粗飼料と同等程度であり、物理性も充分に有するものであった。しかし多給(乾物で40%)した場合は慣行飼料に比べて血中の逸脱酵素等に高い値が示されたことから、20%程度を上限に給与するのが妥当と考えられた。 (3)ヒマワリ粕の飼料特性価値を行った。ヒマワリ油を溶媒抽出した残渣であるヒマワリ粕(SFM)は広く利用されている蛋白質飼料であるが、機械的に搾油したヒマワリ粕(SFC)はSFMと比較して残存脂肪も多く、その飼料価値に関しては報告が少ない。in situ 試験で求めたSFCの蛋白質分解パラメータでは可溶性蛋白質が高く、しかもその多くがアミノ態窒素化合物であることを明らかにした。蛋白質水準を同一にして大豆粕と比較したヤギの代謝試験では、SFCは良好な蛋白質飼料であるものの、体内での窒素利用性では大豆粕よりも低い結果が得られた。しかし蛋白質と高消化性炭水化物水準を同一にしたウシの代謝試験では、ルーメン内微生物合成量や窒素利用性には差は見られず、条件によりSFCは大豆粕の代替になり得ると考えられた。