日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

1. 栄養・飼養

栄養・飼養Ⅱ

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:20 第III会場 (1・2番講義室)

座長:林 義明(名城大農)、小池 聡(北大院農)、塚原 隆充(栄養・病理研)、福山 朋季(麻布大学)

10:40 〜 10:50

[III-20-11] 仔豚への抗生物質(エンラマイシン)の給与が腸内細菌および代謝物に及ぼす影響

*梅村 佳奈1、宮田 紫帆1、吉本 悠人1、呂 官霖2、井上 亮3、須田 義人2、山本 ゆき1、永岡 謙太郎1 (1. 農工大農、2. 宮城大食産業、3. 摂南大農)

【目的】近年、国内外を問わず薬剤耐性菌の出現が問題視されており、抗菌薬に頼らない家畜の成長促進方法の開発が求められている。一方で、抗菌薬の成長促進メカニズムについてほとんど何もわかっていない。そこで本研究では、現在も広く利用される抗菌薬エンラマイシン(En)の飼料添加の有無が、子豚の腸内細菌叢、腸内代謝産物、および血中代謝産物に及ぼす影響を調べることとした。【方法】生後4週齢の去勢雄仔豚(LDW)を6頭ずつEn摂取群 (En 10.00g力価/トン含有飼料)と対照群 (En不含飼料)にわけて飼育を行い、生後9週齢で血液、盲腸便、肝臓、回腸、空腸を採材した。試料はメタボローム解析、腸内細菌叢解析、SCFA測定、遺伝発現解析に供した。【結果】En摂取群は対照群と比較して有意な体重増加が認められ、離乳直後の下痢の発生率も低かった。生後9週におけるEn摂取群の腸内細菌叢の多様性は高く、ラクトバチルス群が増加する一方でビフィドバクテリウム群の減少が認められた。またメタボローム解析の結果から、血中のジメチルグリシン(DMG)やインドール乳酸の有意な増加、および糞便中のトリプタミンや酢酸の増加が認められた。さらに肝臓組織中のDMG代謝系酵素の発現増加も確認された。以上の結果から、低用量Enの摂取は腸内環境を改善し、特にラクトバチルス群や血中DMGの増加が子豚の健全な成長に寄与すると考えられる。