日本畜産学会第131回大会

講演情報

優秀発表賞応募講演

優秀発表賞応募講演

優秀発表Ⅰ

2023年9月19日(火) 09:00 〜 10:30 第II会場 (大講義室)

座長:青木 康浩(東京農工大学)、上田 宏一郎(北海道大学大学院農学研究院)、塚原 隆充(栄養・病理研)、舟場 正幸(京都大学)

09:45 〜 10:00

[IYS-19-04] 抗菌性成長促進剤の代替としての加熱処理Lactobacillus sakei HS-1株の給与が離乳豚の成長成績、栄養状態、腸内細菌に与える影響

*松原 夏月1、李 俊佑2、榎本 百利子2、高橋 友継2、馬 敏2、二宮 遼3、風見 大司4、平山 和宏1 (1. 東京大学大学院農学生命科学研究科、2. 東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場、3. 大和薬品株式会社、4. カザミフードサイエンス)

養豚産業では、離乳豚で利用される抗菌性成長促進剤(AGP)の代替が求められている。Lactobacillus sakei HS-1株 (LS)は、発酵食品から分離された菌株であり、本研究では加熱処理したLS(HT-LS)のAGP代替としての有用性を調査することを目的とした。21日齢で離乳した子豚 (LWD) 18頭を、一般離乳用飼料のみを給餌した区(CT区)、硫酸コリスチンを30ppm添加した区(CS区)、HT-LSを2.0×105 CFU/gの割合で添加した区(LS区)へそれぞれ6頭ずつ分けた。4週間の飼養後、LS区は、体重増加や日増体量がCT区と比較して有意に向上し、CS区と比較しても同等以上の成績だった。また、LS区はCT区と比較して、複数の血漿中アミノ酸濃度や糞便中の酢酸濃度が高い傾向を示した。また、LS区は、血中の免疫グロブリン濃度が有意に低く、炎症反応が抑制されていることが示唆された。LS区では糞便内でStreptococcusLactobacillusなど、乳酸菌の相対存在量が増加しており、予測メタゲノム解析では、有機酸発酵のパスウェイが活性化されていた。さらに複数の細菌には血漿中アミノ酸濃度や糞便中有機酸濃度との相関関係が確認された。これらの結果は、HT-LSが離乳豚において腸内細菌を介した栄養素の効率的な利用を促進することで、成長成績を向上させることを示唆する。