日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Cp] 食品分析

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 C会場 (3F N323 )

座長:氏田 稔(名城大学)、谷 史人(京都大学)、加藤 毅(日本食品分析センター)

15:15 〜 15:30

[2Cp-02] 定量NMRによるカロテノイド類の迅速・高精度分析法の開発(2)

山本 佳奈1、水口 恵美子1、内藤 早苗1、*加藤 毅1 (1. 一般財団法人日本食品分析センター)

キーワード:定量NMR、カロテノイド、サプリメント

【目的】 健康食品等に用いられるアスタキサンチンは,ヘマトコッカス藻等からの抽出物が用いられており,全トランス体の他に9-シス及び13-シス体を含む.また,これらのアスタキサンチンは,一部の遊離体を除くと,脂肪酸が結合したモノ及びジエステル体で構成されていることから,HPLCを用いた分析法では,定量前に脱エステル化操作を必要とする.アスタキサンチンエステル体の脱エステル化には,アルカリけん化法よりも高回収率であるコレステロールエステラーゼを用いた方法が用いられているものの,真の収率が得られているのかの評価が難しい.今回,非破壊分析の可能な定量NMR(1H NMR)を用いて,脱エステル化操作を必要としない分析法の確立を試みたので報告する.
【方法】 アスタキサンチンの定量操作及び1H NMRの測定は,(1)で報告したカロテノイドの分析法を用いて実施した。定量対象が複数の分子種に及ぶことから,あらかじめ,ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン標準試薬の1H NMRを測定し,全トランス体及びシス体など定量に用いるシグナルを帰属・決定した.
【結果】 1H NMRの結果から,ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン標準試薬のエステル型と遊離型の比率は概ね7:3であり,両者の不飽和二重結合に由来するシグナルの化学シフトは,全トランス体,9-及び13-シス体とも概ね一致していたため,アスタキサンチン分子種をまとめて定量することが可能であった.他のカロテノイドを含まないサプリメントについて,(1)で報告した液-液分配操作を適用したところ,全てのアスタキサンチン分子種は下層に回収され,予備的に実施した定量試験では,表示値と同等以上の結果が得られた. 現在,複数のカロテノイドを含む試料への適用性を検討しており,バリデーションの結果と併せて,発表時に報告する.