日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Cp] 食品分析

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 C会場 (3F N323 )

座長:氏田 稔(名城大学)、谷 史人(京都大学)、加藤 毅(日本食品分析センター)

17:30 〜 17:45

[2Cp-11] AIアルゴリズムによるグラジエント条件の自動最適化
~機能性成分一斉分析メソッド開発への適用~

*池田 涼音1、藤崎 真一1、寺田 英敏1、松本 恵子1 (1. 株式会社島津製作所)

キーワード:機能性成分、機能性表示食品、自動最適化、液体高速クロマトグラフ、カテキン

【目的】必須栄養素に含まれない食物繊維,ポリフェノール,カロテノイドなどのうち,適量摂取によって健康増進(血糖値上昇の抑制など)への効果が期待される成分である機能性成分の研究が進んでいる.機能性成分を含む食品は,機能性表示食品として届出が可能である.届出時には,食品に有効量の機能性成分が含まれていることを確認する必要がある.この際,一般的には液体クロマトグラフ(HPLC)などの分析機器を用いて定量分析を行う.しかし,複数の分析成分を対象とする場合,それぞれを分離して信頼性高く定量することは容易でなく,成分間を分離する分析条件の検討には経験や時間を要する.本研究では分析者が検討時に行うプロセスを模した新規AIアルゴリズムを利用し,茶葉に含まれる機能性成分について, AIアルゴリズムによるHPLC分析条件の自動最適化と最適化された分析条件の有効性を実サンプルにて確認した.
【方法】機能性成分であるカテキン類,テアフラビン類,没食子酸の15種の混合標準溶液をサンプルとし,AIアルゴリズムを搭載した解析ソフトウェアLabSolutions MDによる分析条件の自動最適化を行った.続いて,LabSolutions MDによって最適化された分析条件を用い,品種の異なる緑茶または紅茶の茶葉(全6種)に含まれるカテキン類,テアフラビン類,没食子酸の分析を行った.
【結果】初回の分析では,構造が類似している化合物間について分離不十分なピークが複数確認されたが,AIアルゴリズムによる分析条件の自動最適化によって15種の分析対象成分を分離できる条件を得た.また,最適化した分析条件を茶葉の分析へ適用し,分析結果より茶葉に対する科学的考察を行うことができた.新規アルゴリズムは分析者の知見や経験に依存せず,簡便に分析条件を決定することを支援し,機能性成分の研究促進に貢献することが示唆された.