日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Jp] 加工、製造技術

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 J会場 (2F N207)

座長:井倉 則之(九州大学)、中村 彰宏(茨城大学)、高重 至成(大阪公立大学)

16:45 〜 17:00

[2Jp-07] GDLを用いた擬似発酵乳における水溶性エンドウ多糖類の機能性

*小倉 日真莉1、足立 典史2、芦田 裕子3、津村 和伸1、佐本 将彦2、中村 彰宏1,2 (1. 茨城大・院・農、2. 不二製油グループ本社(株)、3. 不二製油(株))

キーワード:エンドウ、タンパク質、多糖類、安定化

【目的】水溶性エンドウ多糖類(PPS)は, 酸性乳飲料においてタンパク質の凝集を抑制する安定剤として利用される一方で, 発酵乳調製過程でのタンパク質への作用性については明らかになっていない. 本研究では, グルコノ-δ-ラクトン(GDL)を用いた擬似発酵系において, PPSのタンパク質の安定化機構の解明を試みた.
【方法】メチルエステル化度(DE)の異なるPPS-H(DE=71%)とPPS-L(DE=25%), 及びHMPを安定剤として擬似発酵乳を調製し, タンパク質粒子の粒径と粘度の挙動, SEM観察像から発酵時のタンパク質の安定化能を比較した. また, 擬似発酵乳で無脂乳固形分3.0% の酸性乳飲料を調製し, メディアン径, 及び遠心分離(2000 rpm, 20分)で生じる沈殿率から, タンパク質の安定化能を比較した. さらに, ペクチナーゼによるPPSの酵素分解とDLSによるブラウン粒径の測定から, 安定したタンパク質粒子表面に吸着するPPSの膜厚解析を試みた.
【結果】PPS-Hは発酵時の粒径や粘度挙動を変化させなかった一方で, PPS-LはpH 5.2付近で粒径の増大と急激な粘度上昇を抑制した. また, 発酵乳のSEM観察像より, PPS-Lの添加でタンパク質粒子の微細分散した構造が確認された. このことから, PPS-Lは発酵時のタンパク質粒子の表面正電荷域に速やかに吸着し, 凝集を抑制すると推察した. 酸性乳飲料では, pH 4.2においてPPS-H1.0% の添加でメディアン径が1.5 µm, 沈殿率が3.6% となった一方で, PPS-L1.0%の添加では0.73 µm, 1.0%と低い値を示し, 高いタンパク質の安定化能を示した. また, 膜厚はPPS-Hで30 nm, PPS-Lで35 nmと見積もられ, これはSEC-MALS解析による単分子の粒径に相当し, DEに関わらずPPS分子は単層でタンパク質粒子の表面に吸着していると推察された.