The 71th Annual Meeting of JSFST

Presentation information

Oral presentation

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Mp] Physical property of food

Fri. Aug 30, 2024 3:00 PM - 6:00 PM Room M (2F N203)

Chair:Mito Kokawa, Haruhiko Koizumi

4:00 PM - 4:15 PM

[2Mp-05] The Molecular Study of Relationship between Physical Properties and Molecular Structure of Triacilglicerols

*Kazushi Fujimoto1, Yuki Kitamura1, Junya Metoki 2, Kenta Kishi2, Shogo Tsujino2, Kazuma Yoshimura2, Hiroshi Hirai2 (1. Kansai University, 2. The Nisshin OilliO Group)

Keywords:triacylglycerol, Molecular Dynamics Simulation

【目的】 
食品油脂の代表的な構成成分であるトリアシルグリセロール(TAG)はグリセロール骨格に脂肪酸が3つ結合した構造を有している。脂肪酸自体は直鎖の炭化水素鎖で構成されているにも関わらず、この脂肪酸の組み合わせで油脂の物性が大きく異なる。このTAGの構造と油脂の物性との関連は未解明であり、解明するには分子レベルからの知見を必要とする。我々は、3種類のTAGの分子動力学(MD)計算を実施し、それら分子の構造と油脂の物性の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
カプリル酸(8:0)、オレイン酸(18:1)、(9,12,15)-リノレン酸(18:3)がそれぞれ3つ結合した3種類のTAGのMD計算を実施した。MD計算にはGROMACSを用いた。力場にはOPLSS-AAを用いた。これらの計算はスーパーコンピュータ「富岳」を用いて実施した。
【結果】
3種類のTAGの界面張力、密度、凝集密度エネルギーを計算した結果、界面張力および密度がよく実験値を再現しており、本MD計算が妥当であることがわかった。界面張力は炭素鎖が短い油脂よりも長い油脂の方が大きいが、その差は2割程度であった。一方で、密度に関しては炭素鎖が長い油脂の方が低いことがわかった。凝集密度エネルギーは全ての分子種で同じ値であった。以上から、油脂の静的な3つの熱力学量には大きな差がなかった。次に、動的熱力学量である自己拡散係数(D)を3種類のTAGについて算出した。8:0と18:3のTAGのDは同じ値であり、18:1のDに比べて5倍大きな値であった。解析の結果、8:0は小さい分子のため大きなDとなった。18:3は18:1より二重結合が多く、水素原子が少ないことが原因で大きなDとなった。このように、静的熱力学量とDの観点から分子構造と油脂の物性の関連を明らかにした。