日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Np] 衛生、殺菌、抗菌

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 N会場 (2F N202)

座長:山木 将悟(北海道大学)、本城 賢一(九州大学)、勝木 淳(熊本大学)

16:00 〜 16:15

[2Np-05] 抗菌剤散布がレタス栽培土壌の菌叢ならびに薬剤耐性菌に及ぼす影響

*安留 正倫1、中尾 朱李1、實政 裕哉1、益田 時光1、本城 賢一1、木嶋 伸行3、石井 孝昭4、宮本 敬久2 (1. 九大・院・生資環、2. 九大・院・農、3. (国研)農研機構食品研、4. (同)アグアイッシュ)

キーワード:薬剤耐性菌、農薬、抗生物質、土壌、野菜栽培

【目的】抗生物質は,畜産業や水産業では既に耐性菌の出現を抑えるために抗菌剤利用の適正化や制限を進めているが,農業分野では,抗菌剤散布による耐性菌の出現状況や,それらの耐性菌がヒトへの健康被害を及ぼす可能性は明らかにされていない.そこで本研究では,抗菌剤使用履歴の異なる土壌でレタスを栽培し,抗菌剤散布による耐性菌の存在割合に及ぼす影響を調査することでヒトへの健康に影響を及ぼす可能性があるかを明らかにすることを目的としている.【方法】まず,レタス栽培履歴の異なる2種類(慣行栽培および無農薬栽培)の土壌を用いて,春の収穫を想定した明期16時間25℃,暗期8時間15℃,ならびに夏から秋の収穫を想定した明期30℃,暗期20℃の条件でレタスの栽培を行った. 1.5%オキシテトラサイクリン(OTC) および18.8%ストレプトマイシン(SM) 硫酸塩を含む混合溶液を2000倍に希釈したものを収穫 1ヶ月前,2 週間前の 2 回,1プランターあたり15 mlスプレーで噴霧した.栽培終了時の土壌を16Sアンプリコン解析での菌叢解析を行い,さらに生理食塩水で段階希釈し,40 µg/mlのOTCまたは SMを含有したR2A 寒天培地を用いて25℃で耐性菌を分離し,96個のコロニーについて16S rRNA遺伝子の一部の塩基配列決定結果に基づいて菌種同定を行った.【結果】25/15℃の無農薬栽培由来土壌で抗菌剤散布による菌叢変化が認められた.また,25/15℃の栽培条件では,SM耐性菌として無農薬栽培由来土壌ではLysinibacillus属細菌の割合が増加し,OTC耐性菌として慣行栽培由来土壌ではStenotrophomonas属細菌の割合が増加した.また,30/20℃の栽培条件では,SM耐性菌として慣行栽培由来土壌でSphingopyxis属細菌が増加した.