日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ba] 生理活性物質

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 B(S3)会場 (3F N322)

座長:高橋 正和(福井県立大学)、牧野 義雄(香川短期大学)、山本 晃司(あいち産業科学技術総合センター)

10:00 〜 10:15

[3Ba-05] 可視・近赤外分光法を用いた中晩生カンキツ品種におけるβ-クリプトキサンチン含有量の非破壊推定

*杉浦 実1,2、久永 絢美2、阪中 達幸3、吉岡 照高4 (1. 同志社女子大学、2. (国研)農研機構果樹茶業研、3. (一財)雑賀技術研、4. (国研)農研機構九沖農研)

キーワード:非破壊測定、可視および近赤外分光法、中晩生カンキツ品種、カロテノイド、β-クリプトキサンチン

【目的】β-クリプトキサンチン(以下,BCR)はウンシュウミカンに特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種である.我々はこれまでに,ミカン果実中のBCR含有量が可視・近赤外線センサーで推定可能であることを明らかにしてきた.本研究では, BCRを含有する中晩生カンキツ 6 品種において,可視・近赤外線センサーを用いた非破壊推定が有効かについて検証した.【方法】国内の主要な中晩生カンキツ品種のうち‘あすみ’,‘せとか’,‘せとみ’,‘津之輝’,‘津之望’,および‘はるみ’の6品種について検討した.各中晩生カンキツ果実を各品種群で均等になるように2グループに分け,一方を検量線作成用,もう一方のグループを評価用に用いた.600-970 nmにおける二次微分スペクトルを説明変数としてPLSRを行い,検量線の推定精度は検量線評価群の標準誤差(SEP)をHPLC分析によるBCR含有量測定値の標準偏差で割った値であるRPDにて評価した.【結果】いずれの中晩生カンキツ品種においても可視領域では,600 nm付近において,短波長側に進むにつれて吸光度の二次微分値の減少が認められた.これは600 nm以下の波長領域に極大吸収を持つ色素成分によるものであり,吸収の裾を捉えていると考えられる.果実中BCR含有量の推定精度を検証したところ,品種により大きな差異が認められ,600–620 nm領域の吸収がBCR含有量を推定する上で重要であること,また糖度に関連する波長領域もBCR含有量の推定に影響していることを明らかにした.RPD値が比較的低かった‘あすみ’においても,R2値は0.637(p<0.001)であり,他の品種ではいずれも0.7以上であった(p<0.001).
【謝辞】本研究は同志社女子大学学内助成金,公益財団法人園芸振興松島財団および全国柑橘消費拡大協議会の支援を受けて実施した.