日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ba] 生理活性物質

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 B(S3)会場 (3F N322)

座長:高橋 正和(福井県立大学)、牧野 義雄(香川短期大学)、山本 晃司(あいち産業科学技術総合センター)

11:15 〜 11:30

[3Ba-09] 溶解度分別法を利用したグリチルリチン精製法の開発

*本夛 崚資1、西野 蛍汰2、福田 悠作2、三輪 彦輝2、片野 肇1、高橋 正和1 (1. 福井県立大・院・生物資源、2. 福井県立大・生物資源)

キーワード:甘草、グリチルリチン、溶解度分別

【目的】グリチルリチン(GL)は甘草(Glycyrrhiza glabra)の根に含まれ,抗炎症作用や抗ウイルス作用など多様な生理活性を示し,漢方薬成分として利用価値が高い.また本化合物はトリテルペノイドサポニンであり,グルクロン酸残基を2残基含む配糖体である.我々はこれまでにホウ砂水溶液を用いて大豆全粒粉末のメタノール抽出物から簡便にB型大豆サポニンを精製する手法を開発しており,カラム精製前の前処理法として極めて有用である(Anal. Sci.,2019).この手法はサポニンの糖鎖に含まれるcis-diol構造を利用しており,類似構造を有する配糖体,GLの簡便精製手法の開発にも応用できると期待された
【方法】甘草粉末のメタノール抽出物(画分A)やアンモニア水抽出物(画分Ⅰ)から得られた精製標品について,逆相HPLC解析でGL量を求め,精製回収率を算出した.純度はGL量を乾燥重量で割って求めた.
【結果】GLは水への溶解性は低いが,ホウ砂水溶液には容易に溶解し,さらに酸性にすると再沈殿する.この性質を利用して画分A(GL純度8.5%)をホウ砂水溶液と希塩酸で処理したところ,高極性不純物が除かれて画分B(純度31%,回収率94%)が得られた.次に画分Bに含まれる低極性不純物を除去するため,Sep-Pak C18固相抽出にて画分C(純度40%,回収率35%)を得たのち,逆相分取HPLCにて画分D(純度>90%,回収率10%)を取得した.しかし固相抽出やカラム精製は回収率を低下させるため,甘草粉末の抽出段階で低極性不純物を減らすべく,アンモニア水抽出物(画分Ⅰ;純度6.7%)の調製を検討した.画分Ⅰには低極性不純物が少なく,画分Ⅰをホウ砂水溶液と希塩酸で処理することで,最終的に高極性不純物が除去された画分Ⅱ(純度70%,回収率70%)を簡便に得ることに成功した.