日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Cp] 食品分析

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 C会場 (3F N323 )

座長:仲川 清隆(東北大学)、松田 寛子(日本獣医生命科学大学)、間野 博信(あいち産業科学技術総合センター)

14:45 〜 15:00

[3Cp-03] 光による精肉の脂質酸化亢進

*千田 彩華1、加藤 俊治1、仲川 清隆1 (1. 東北大・院・農・食品機能分析学)

キーワード:光酸化、脂質酸化、LC-MS/MS、精肉

【目的】精肉の脂質は食品売り場などの光によって酸化され,品質が低下する可能性が示唆されている.一般に光酸化は光増感物質によって惹起され,その機構はラジカルが関与するTypeⅠ光酸化と一重項酸素が関与するTypeⅡ光酸化に分類されるが,精肉の光酸化機構はほぼ不明なのが現状である.当研究室はLC-MS/MSを用いた脂質酸化一次生成物異性体の分析法を構築し,TypeⅠ,TypeⅡ光酸化を見極めることができる.そこで本研究では,豚肉を対象に,異性体分析法を用いて,光照射した際の光酸化の程度,光酸化に寄与する脂質クラス(トリアシルグリセロール(TG)やホスファチジルコリン(PC)など),光酸化機構を明らかにすることを目的に実験を行った.
【方法】まずFolch法及び固相抽出により豚肉のTG,PC画分を精製した.これらをLC-MS/MSに供し,豚肉中の主要な分子種をTG16:0_18:0_18:1,PC16:0/18:1と決定した.次にこれらの酸化物であるTG16:0_18:0_18:1;OOH,PC16:0/18:1;OOH異性体標品を調製した.そして,これらの標品に対して最適化した分析法を構築した.構築した方法を用いて,光照射(10,000lx,1日,4℃)と光非照射(暗所,1日,4℃)の豚肉中のTGOOHとPCOOH異性体の生成量を測定し,さらにその異性体組成から光酸化機構を解析した.
【結果】光照射及び光非照射の豚肉をLC-MS/MS法で分析したところ,TGは光照射によって顕著に酸化が亢進した.さらに異性体解析から,TGの光酸化機構は主にTypeⅡ光酸化であると考えられた.TypeⅡ光酸化を惹起させる光増感物質について,ミオグロビンなどが考えられるが,今後さらに詳細を調べていく予定である.一方でPCは光酸化がほとんど見られなかった.この理由についても,さらなる解析を予定している.