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[3Gp-05] Starch properties of "Annou-imo" and "Kenroku” sweet potato cultivars
Keywords:sweet potato, Annou-imo, Kenroku, starch, gelatinization
【目的】 近年,広く注目されている「安納芋」は塊根にβ-カロテンを含み,甘味が強くねっとりした食感が特徴である.一方,戦前の石川県で選抜された「兼六」も,「安納芋」と類似した特徴を持つと言われている.「兼六」は食味が良いことから一時は全国に栽培が広まったとされるが,生育および収量ともやや不良であったこともあり,石川県内での栽培は途絶えてしまった. 坂本ら(2019)は上記の特徴に着目し両品種の比較研究をしたところ,両品種が同一品種であったことをDNAレベルで立証した1).ところが,これらのサツマイモ塊根の大部分を占める澱粉の性質については調査がされていなかった. 本研究では,「兼六」を石川県の新たなブランド農産物として普及させるため,両品種の澱粉の性質について検証することを目的とした.【方法】 2023年の秋に石川県農林総合研究センター砂丘地試験場で収穫された「安納芋」及び「兼六」塊根を,相対湿度65~90%,室温12~15℃で1ヶ月及び2か月間貯蔵したのち試料を採取した.遊離糖含量は試料を蒸熱したのち抽出液を調製し,高性能イオンクロマトグラフィーで分析した.澱粉の糊化及び老化に関する特性は,生試料から分離した澱粉を用いて示差走査熱量計で分析した.【結果】 「安納芋」及び「兼六」は,貯蔵1ヶ月後及び2ヶ月後共にほぼ同量の遊離糖が含まれることが分かった.両品種共にフルクトースとグルコースが同程度で最も低い含量であり,次いでスクロース,マルトースの順に含量が高かった.澱粉の糊化の性質を比較すると,各澱粉の糊化開始温度は,「兼六」の方が「安納芋」よりも高い傾向が見られた.糊化エンタルピー変化は,「兼六」の方が「安納芋」よりも小さい傾向が見られた. 1)坂本知昭,片山(池上)礼子:サツマイモ品種「兼六」と「安納いも」の類縁性.育種学研究,21,11-19 (2019).