日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[3Ha] 穀物、豆、イモ

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 H会場 (3F N303)

座長:松村 康生(京都大学)、成川 真隆(京都女子大学)、佐藤 広顕(東京農業大学)

10:15 〜 10:30

[3Ha-05] 大豆加工工程における種子微細形態の変化

*芦田 祐子1、佐藤 亮太郎1、松村 康生2 (1. 不二製油(株)、2. 京都大)

キーワード:大豆、豆腐、味噌、走査型電子顕微鏡、オイルボディ

【目的】大豆やその加工食品の組織構造について,古くは1970年代から透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察されている.走査型電子顕微鏡では,ゲルのネットワーク構造に関する報告が多くある一方,油脂の集積構造については報告が少ない.本研究では,大豆子葉における油脂の貯蔵組織であるOil body(以下OB)に着目し,加工方法による構造変化について,市販の豆腐や味噌の微細構造の観察による解明を試みた.
【方法】吸水後の大豆子葉,蒸し大豆,市販の3種類の豆腐(絹ごし豆腐,もめん豆腐,充填豆腐)及び,生味噌中の子葉断片は,定法によりグルタルアルデヒド,次いで酸化オスミウムで化学固定し,エタノール系列で脱水,凍結割断後,t-ブチル凍結乾燥法で乾燥し,導電性を付与して観察試料とした.試料は走査型電子顕微鏡(日立ハイテク,SU3500)を用い,二次電子・反射電子検出器で,OBや油滴の形状および油滴表面の構造を中心に観察を試みた.
【結果】 加熱前の大豆子葉の細胞内において,OBはProtein Storage Vacuole(以下PSV)の周囲に存在し,その大きさは200-600 nmであった.豆腐の油滴の大きさはOBに近似し,200-1000 nmであった.吸水後に加熱工程を経た蒸煮大豆と味噌の子葉では,細胞内に巨大な油滴が存在していた.油滴の表面の形状を比較すると,豆腐の油滴の表面は粗く,細かな凹凸があるのに対し,種子形状のままでの加熱を経た味噌子葉中の油滴は表面が平滑であった.これらの構造の差異は,吸水後に未加熱のまますり潰される(呉)の場合,OBの表面には水に溶出したPSV中の蛋白質が吸着するのに対し,味噌子葉の細胞内のPSVは加熱後もその形態を保持し,油滴表面への蛋白質の吸着が起こりにくいことに起因すると考えられた.