09:30 〜 09:45
[3Ia-03] 凝乳酵素によるUHT(超高温殺菌)牛乳のカード形成に及ぼすpHとカルシウムの影響
キーワード:牛乳、動的粘弾性、カード、カルシウム、pH
【目的】UHT(超高温殺菌)牛乳は凝乳酵素で凝固しないが、カルシウムを添加、あるいはpH 6.1以下とすれば凝固する。本研究では、凝乳プロセスやチーズカードの力学物性を測定、定量化し、両者の凝乳メカニズムを考察することを目的とした。
【方法】市販UHT牛乳に、所定量のグルコノデルタラクトンと、塩化カルシウムを添加し、それぞれpH(6.1, 5.8, 5.3)とカルシウム濃度(0.06, 0.08, 0.1%)を調整した。これらに凝乳酵素(CHYMAX Powder-Extra)を0.003%添加し、アントンパール社製MCR302で動的粘弾性を測定した。さらに、作製したチーズカードの動的粘弾性を測定するとともに、一般組成を分析した。
【結果】カルシウムの添加は、ゲル化時間を短縮し、平衡時のゲルの弾性率を増加させたが、ゲル化時点での弾性率はカルシウム添加量に関係なく、ほぼ一定であった。酸性化はゲル化時間を急激に短縮するとともに、ゲル化時点での弾性率を増加させた。平衡時の弾性率もpHが下がるにつれて急激に増加したが、pH 5.5 になると損失正接が著しく増加し、粘性的性質(液的性質)の寄与の増加がゲルに観察された。低温殺菌牛乳で調製したチーズカードと比較すると、カルシウム添加により生成したチーズカードは損失正接が小さく弾性的性質の寄与がより大きいと考えられた。一方、酸性化により生成したチーズカードは、損失正接が大きく、粘性的性質の寄与がより大きいと考えられた。これらの物性上の差異が観察された理由として、カルシウム添加により、ミセル性リン酸カルシウムの増加とカゼインミセルの新たな生成がカゼインミセル間の相互作用を強化するのに対して、酸性化ではミセル性リン酸カルシウムのホエイ画分への溶出とカゼインミセル間の静電的反発力の低下が凝固の主な要因になるためと考えられた。
【方法】市販UHT牛乳に、所定量のグルコノデルタラクトンと、塩化カルシウムを添加し、それぞれpH(6.1, 5.8, 5.3)とカルシウム濃度(0.06, 0.08, 0.1%)を調整した。これらに凝乳酵素(CHYMAX Powder-Extra)を0.003%添加し、アントンパール社製MCR302で動的粘弾性を測定した。さらに、作製したチーズカードの動的粘弾性を測定するとともに、一般組成を分析した。
【結果】カルシウムの添加は、ゲル化時間を短縮し、平衡時のゲルの弾性率を増加させたが、ゲル化時点での弾性率はカルシウム添加量に関係なく、ほぼ一定であった。酸性化はゲル化時間を急激に短縮するとともに、ゲル化時点での弾性率を増加させた。平衡時の弾性率もpHが下がるにつれて急激に増加したが、pH 5.5 になると損失正接が著しく増加し、粘性的性質(液的性質)の寄与の増加がゲルに観察された。低温殺菌牛乳で調製したチーズカードと比較すると、カルシウム添加により生成したチーズカードは損失正接が小さく弾性的性質の寄与がより大きいと考えられた。一方、酸性化により生成したチーズカードは、損失正接が大きく、粘性的性質の寄与がより大きいと考えられた。これらの物性上の差異が観察された理由として、カルシウム添加により、ミセル性リン酸カルシウムの増加とカゼインミセルの新たな生成がカゼインミセル間の相互作用を強化するのに対して、酸性化ではミセル性リン酸カルシウムのホエイ画分への溶出とカゼインミセル間の静電的反発力の低下が凝固の主な要因になるためと考えられた。