日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Ip] 加工、製造技術

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 I会場 (3F N302)

座長:田村 匡嗣(宇都宮大学)、安藤 泰雅(農業・食品産業技術総合研究機構)、守田 和弘(実践女子大学)

14:45 〜 15:00

[3Ip-03] 加熱処理を施した米粉および蕎麦粉ペーストの3D印刷可能性の検討およびレオロジー特性の評価

*石川 惟月1、齋藤 高弘2、田村 匡嗣2 (1. 宇都宮大学大学院、2. 宇都宮大学)

キーワード:テクスチャ、降伏応力、造形精度

【目的】食品を立体的に出力する3Dフードプリンタ(以下,3DFP)は既存の調理方法に縛られない次世代の食品加工技術として近年注目を集めている.中でも,炭水化物は世界の3D食品印刷市場において2020-30年に最も高いCAGRで成長すると推測されているセグメントであり,国内外で小麦粉やマッシュポテトを用いたインクの開発が活発に行われている.一方で食品の物性は温度条件や含有成分によって複雑に変化するため,3D造形に適した物性の評価に関する研究は発展途上で,印刷可能な食品の種類が限られているのが現状である.本研究では,食品の物性を変化させる手段として有効な加水比を変化させ,力学的特性を測定することで米および蕎麦粉末の押出方式の3DFPによる印刷に適した調製条件を解明することを目的とした.
【方法】試料の米粉および蕎麦粉は乾物重30gに対して3倍,4倍,5倍,6倍の加水比で沸騰水を加え3分間手動で混合し,攪拌機によって沸騰水中で20分間攪拌することでペースト試料とした.これらのペースト試料をノズルに充填し,押出方式の3DFPであるFOODINIによって内部が空洞の円柱を印刷したのちに写真を撮影し,画像処理によって造形精度を評価した.力学的特性は,食感試験機によって硬さ,付着性,粘着力を,B型粘度計によって見かけの降伏応力を測定した.
【結果】RF,MPF,BFすべてにおいて加水比の増加に伴って硬さや付着性,粘着力,降伏応力の値は有意に低下し,含水率と力学的特性の連動性が確認された.印刷後の造形物の写真からBFで5倍,RFで3倍の加水比で調製することで高精度造形が可能であることが明らかになった.高精度造形帯より低い加水比で調製した試料は吐出が断続的になり,一方で高い加水比で調製した試料は印刷中または印刷後に造形物が扁平化した.