日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Ip] 加工、製造技術

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 I会場 (3F N302)

座長:田村 匡嗣(宇都宮大学)、安藤 泰雅(農業・食品産業技術総合研究機構)、守田 和弘(実践女子大学)

15:45 〜 16:00

[3Ip-07] カボチャの加工特性に及ぼすパルス電界処理の影響

*佐々木 朋子1、松木 順子1、植村 邦彦1、中西 亜加音2、津田 真吾2、木村 啓太郎1 (1. (国研)農研機構 、2. 三菱電機(株))

キーワード:パルス電界処理、カボチャ、ゲル

【目的】パルス電界処理は,農産物にパルス電界を印加することによって,細胞組織に物理的変化が生じることを利用した非加熱加工技術としての応用が期待されている.加工・業務用の野菜の需要が拡大している中で,カボチャについても保存が可能な食材としてパウダー,フレーク,ペースト等の加工品の需要が高まっている.本課題では,カボチャの加工工程におけるパルス電界処理の影響を明らかにするために,パルス電界印加後の果肉部分のテクスチャー,粉末化した試料から調製したペーストおよびゲルの特性を解析した.
【方法】パルス高電圧の発生にはパルス電界処理装置(三菱電機株式会社)を用いた.25℃の水道水中でカットしたカボチャに電界強度1.85 kV/cm,パルス幅3.0msおよび9.5msの条件でパルスを1000回印加した.パルス印加後,果肉部の切断試験を行い,凍結乾燥後粉末化した試料については糊化時の粘度変化を測定した.さらに,粉末からペースト(20%, w/w)を調製し,調製直後の物性を測定すると共に,ペーストを5℃で1時間および1日冷蔵することによって形成したゲルの硬さを測定した.
【結果】パルス処理によって,カボチャ果肉部の顕著な軟化が認められ,パルス幅が3.0msよりも9.5msの処理で果肉部の軟化が進行した.凍結乾燥後粉末化したパウダーの糊化時の粘度変化にはパルス幅の影響が見られ,パルス幅3.0msの処理では対照試料との間に顕著な違いは見られなかったが,パルス幅9.5msでは粘度上昇開始温度が高く,冷却時の粘度上昇が高くなる傾向が認められた.パルス処理をしたカボチャのパウダーから調製したゲルは,1日冷蔵することによって対照試料と比較して急速に硬化が進行し,有意に高い圧縮応力値を示した.以上の結果から,パルス処理によって澱粉の老化が促進される可能性が示唆された.