1:10 PM - 2:00 PM
[3K10-10-01] Food texture design of meat-analogue based on egg white protein using laser food 3D printer
Keywords: 3d printer, food texture, meat analogue, laser, protein
【講演者の紹介】
武政 誠(たけまさ まこと)
略歴:早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻,博士(理学)取得, 大阪市立大, 大阪府立大, NTNU(Norway), 理化学研究所を経て2007年より現職, 専門は多糖物性, 近年はフード3Dプリント, 食感AI分析等
近年、畜肉の需要と供給バランス、また環境負荷など様々な課題が指摘されている。また来たるプロテインクライシスへの対応など、代替肉に注目が集まっている。植物および昆虫由来のタンパク質を中心に、代替肉の主要原料として利用するべく広く検討されている。食の一次機能の観点では、食肉と遜色ないレベルを代替タンパク源で実現することは可能であるが、二次機能には複数のハードルが存在する。例えば、赤身の肉を再現するためにはヘム由来の鉄が欠かせない。いわば「血の味」であるが、植物由来のヘム遺伝子を利用して大量発現、生産することで、化学的な味としての血の味は再現可能となりつつある。一方、物理的な味である食感に関しては遥かにハードルが高い。筋繊維など自己組織化によって形成された各種階層構造こそが、肉の食感を産み出しており、これらの構造を人工的に再現するとなるとコスト的にはもちろん、技術的にも不可能に近い。細胞培養により、組織の自己組織化までをも構築する方向も模索されているが、費用や培養時間など課題も存在する。一方、完全に同一でなくとも、肉の内部構造を模倣した構造を、食品タンパク質を利用して創り込むことで、肉ならではの食感を再現できる余地は残されていると考えられる。
我々は、各種フード3Dプリンタを開発しており、肉の筋繊維様の構造を、一本一本創り込むことを可能なシステムを構築している。今回、特にレーザーを利用したフード3Dプリンタにより、造形を行った事例を紹介する。フード3Dプリンタでは、多くの場合でペースト状の高粘度/高弾性率スラリーを細孔ノズルから押し出して、食品材料を空間配置する方式となっている。この方式の欠点は、利用可能な食材に制約が強く、プリントされた食品の食感が狭い範囲内で均一化してしまい、食感のプリント可能幅が狭い、という点である。レーザー光は、非常に強い光を狭い範囲に集光して照射することが可能である。照射部位は局所的に温度が急増するという特徴がある。今回、乾燥卵白を主成分とする、タンパク質を主としたレーザープリンタ用フードインクを開発した。集光レーザーを一軸方向に一定速度で走査しながら局所加熱を行うと、髪の毛のような繊維を一本ずつ、液状フードインク内に形成可能であった。いわば、局所的に繊維状のゆで卵を作製したことになる。一本の繊維を硬化させた後、すぐ隣にもう一本繊維を硬化造形させる工程を繰り返すと、丸太製筏のように棒状の繊維を多数並べた、シート状の構造を造形可能となった。このシートを多数積層することで、3Dプリントすることが可能となった。食感に関しては、繊維と平行の方向で圧縮試験を実施した際と、線維と垂直、つまり繊維を断ち切ると考えられる方向に圧縮した際では、破断強度が約3倍となり、肉の特徴である、構造異方性に起因する食感を、卵白由来タンパク質から肉様食感を「プリント」可能となった。レーザーの走査位置を各繊維間で接近させて一部重なりを持たせることで、硬化部分が強固になり「かたい」肉を、また繊維間距離を離すことで、「やわらかい」食感の肉をも自在にプリント可能になるなど、食感を設計し食品素材に高付加価値を与え、パーソナライズドフードとして様々な可能性を秘めた食品製造法として今後期待される。
武政 誠(たけまさ まこと)
略歴:早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻,博士(理学)取得, 大阪市立大, 大阪府立大, NTNU(Norway), 理化学研究所を経て2007年より現職, 専門は多糖物性, 近年はフード3Dプリント, 食感AI分析等
近年、畜肉の需要と供給バランス、また環境負荷など様々な課題が指摘されている。また来たるプロテインクライシスへの対応など、代替肉に注目が集まっている。植物および昆虫由来のタンパク質を中心に、代替肉の主要原料として利用するべく広く検討されている。食の一次機能の観点では、食肉と遜色ないレベルを代替タンパク源で実現することは可能であるが、二次機能には複数のハードルが存在する。例えば、赤身の肉を再現するためにはヘム由来の鉄が欠かせない。いわば「血の味」であるが、植物由来のヘム遺伝子を利用して大量発現、生産することで、化学的な味としての血の味は再現可能となりつつある。一方、物理的な味である食感に関しては遥かにハードルが高い。筋繊維など自己組織化によって形成された各種階層構造こそが、肉の食感を産み出しており、これらの構造を人工的に再現するとなるとコスト的にはもちろん、技術的にも不可能に近い。細胞培養により、組織の自己組織化までをも構築する方向も模索されているが、費用や培養時間など課題も存在する。一方、完全に同一でなくとも、肉の内部構造を模倣した構造を、食品タンパク質を利用して創り込むことで、肉ならではの食感を再現できる余地は残されていると考えられる。
我々は、各種フード3Dプリンタを開発しており、肉の筋繊維様の構造を、一本一本創り込むことを可能なシステムを構築している。今回、特にレーザーを利用したフード3Dプリンタにより、造形を行った事例を紹介する。フード3Dプリンタでは、多くの場合でペースト状の高粘度/高弾性率スラリーを細孔ノズルから押し出して、食品材料を空間配置する方式となっている。この方式の欠点は、利用可能な食材に制約が強く、プリントされた食品の食感が狭い範囲内で均一化してしまい、食感のプリント可能幅が狭い、という点である。レーザー光は、非常に強い光を狭い範囲に集光して照射することが可能である。照射部位は局所的に温度が急増するという特徴がある。今回、乾燥卵白を主成分とする、タンパク質を主としたレーザープリンタ用フードインクを開発した。集光レーザーを一軸方向に一定速度で走査しながら局所加熱を行うと、髪の毛のような繊維を一本ずつ、液状フードインク内に形成可能であった。いわば、局所的に繊維状のゆで卵を作製したことになる。一本の繊維を硬化させた後、すぐ隣にもう一本繊維を硬化造形させる工程を繰り返すと、丸太製筏のように棒状の繊維を多数並べた、シート状の構造を造形可能となった。このシートを多数積層することで、3Dプリントすることが可能となった。食感に関しては、繊維と平行の方向で圧縮試験を実施した際と、線維と垂直、つまり繊維を断ち切ると考えられる方向に圧縮した際では、破断強度が約3倍となり、肉の特徴である、構造異方性に起因する食感を、卵白由来タンパク質から肉様食感を「プリント」可能となった。レーザーの走査位置を各繊維間で接近させて一部重なりを持たせることで、硬化部分が強固になり「かたい」肉を、また繊維間距離を離すことで、「やわらかい」食感の肉をも自在にプリント可能になるなど、食感を設計し食品素材に高付加価値を与え、パーソナライズドフードとして様々な可能性を秘めた食品製造法として今後期待される。