日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Ka] 加工、製造技術

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 K会場 (2F N206)

座長:松本 泰典(高知工科大学)、上野 聡(広島大学)、本同 宏成(静岡県立大学)

10:00 〜 10:15

[3Ka-05] 減圧加熱処理による食材の軟化

*宮地 夏奈1、柴田 賢哉1、下久 由希1、坂本 みのり1、金﨑 真悠1 (1. 広島総研 食品工技セ)

キーワード:高温急速含浸法、減圧加熱、酵素

【背景】演者らはこれまでに,形状ある食材に物質を急速導入する「高温急速含浸法」(特許第6218206号)を開発した.高温急速含浸法では,予め加熱した食材を室温で減圧処理することにより食材内の水分を沸騰させ,食材を膨張収縮させることで物質導入する.本研究では,減圧下で加熱し続けることで沸騰状態を継続できる減圧加熱処理を用いて,食材内への酵素導入による食材の軟化について検討した.
【方法】試料は冷凍タケノコ(1cm厚)を用いた.酵素液はペクチナーゼ及びヘミセルラーゼ(各0.5 %(w/w))を用いた.試料を解凍後,減圧低温加熱調理器(ヴィードプロ EVC-220,エスペッククリヤラボ(株))中で酵素液に浸漬し,減圧・加熱処理することで酵素を導入した.含浸温度は50℃とし,各種条件(減圧時間及び回数)で減圧処理した.試料を酵素液から取り出し,4℃で一晩酵素反応させた後,スチーム加熱し酵素失活した.一部の試料は,酵素導入後に速やかに調理器内で加熱して酵素失活した.また,試料を解凍後,スチーム加熱したものを対照とした.クリープメータ(RE2-33005B,(株)山電)を用いた破断試験を行い,最大応力(硬さ)を測定した.鶏ムネ肉(2cm×2cm×1cm)およびサバ(30g切り身)についても,タケノコと同様に酵素液(0.1%(w/w)プロテアーゼ)を導入,酵素反応,酵素失活し,破断試験を行った.
【結果】含浸後に酵素反応させた試料の硬さは,対照に対してタケノコで約4~25%,鶏ムネ肉で約30%,サバで約50%に低減した.減圧加熱処理条件とタケノコの硬さの関係について,減圧時間が同じ場合は減圧回数が多いほど,減圧回数が同じ場合は減圧時間が長いほど低減する傾向が見られた.含浸後に速やかに調理器内で失活した試料の硬さは,対照に対してタケノコで約10%,鶏ムネ肉で約30%,サバで約60%に低減した.