日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Ka] 加工、製造技術

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 K会場 (2F N206)

座長:松本 泰典(高知工科大学)、上野 聡(広島大学)、本同 宏成(静岡県立大学)

11:15 〜 11:30

[3Ka-09] スクロースとNaClを溶質とした水溶液による氷膜熱伝導率の評価

*塩見 理乃1、松本 泰典2 (1. 高知工科大学大学院、2. 高知工科大学)

キーワード:凍結濃縮、熱伝導率、スクロース水溶液、NaCl水溶液

【目的】凍結濃縮システムの製氷部を設計する上で,氷生成能力を試算することは重要である.しかし,その試算に必要な氷膜の熱伝導率は,サンプルに含有する成分また濃度によって,純水から生成される氷の熱伝導率2.2W/(m・K)以下となることが定性的に知られているが,明確な値を得られるまでには至っていない.そこで,本研究では液状食品で多く用いられているスクロース,NaClおよび両成分の混合液を対象に,製作した実験装置により氷膜を生成し,熱伝導率の評価を行った.
【方法】スクロース濃度10,20,30wt%,NaCl濃度0.94,2.09,3.53wt%それぞれの単成分水溶液および,それらの濃度を組み合わせた2成分水溶液で実験を行った.実験手順は,-20℃のエチレングリコールにより下面を冷却する円筒型冷却装置に水溶液を投入し,撹拌を行いながら氷膜を成長させた.氷膜を装置側面から撮影し,画像処理ソフトによりその厚さを求めた.サンプリング周期は,氷膜の温度と熱流束は1秒,氷膜厚さは1分とした.水溶液の流動状態については,撹拌レイノルズ数Rer=0,1000,3000,5000とした.
【結果】スクロース水溶液において,Rer=0のとき氷膜の熱伝導率は1.92W/(m・K),一方Rer=5000で撹拌させるとき熱伝導率は2.08W/(m・K)となり上昇した.NaCl水溶液,2成分水溶液も同様に,流動により熱伝導率が向上する結果となった.スクロース水溶液とNaCl水溶液は,水溶液濃度の上昇に伴い,氷膜の熱伝導率は線形的に低下し,その勾配はスクロース水溶液のとき-0.59,NaCl水溶液のとき-0.50となった.また,2成分水溶液では非線形的に低下したことから溶質の種類により異なった傾向が得られた.