13:10 〜 14:00
[3L11-11-01] 大豆種子タンパク質の構造と特性
キーワード:種子、グロブリン、食品機能性、アレルゲン性
【講演者の紹介】
丸山 伸之(まるやま のぶゆき)
略歴:1998年 京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了,1998年 京都大学食糧科学研究所助手,2001年 京都大学大学院農学研究科助手(改組による所属変更),2006年 京都大学大学院農学研究科助教授(名称変更により准教授), 2018年 京都大学大学院農学研究科教授.日本農学進歩賞(2006年,財団法人 農学会),日本農芸化学奨励賞(2009年,社団法人 日本農芸化学会),三島海雲学術賞(2013年 財団法人 三島海雲記念財団)
大豆は11Sグロブリンおよび7Sグロブリンを主要な貯蔵タンパク質としており、おのおのが固有の優れた食品に関連する特性をもつ。両グロブリン共に複数のサブユニットからなる多量体構造を取るため、大豆種子からサブユニット組成の単一なグロブリン分子種を調製することは難しく、私が京都大学食糧科学研究所(内海研究室)において研究に参加したころにはサブユニットごとの加工特性についてはほとんど知見が得られていなかった。そこで、貯蔵タンパク質の遺伝子情報を手掛かりに遺伝子工学的手法およびタンパク質工学的手法を用いて大豆グロブリンの食品に関わるタンパク質特性について詳細に明らかにすることが私の研究のスタートとなった。
大豆7Sグロブリンにはα,α’,βの3種のサブユニットが存在し、αおよびα’サブユニットは共通のコア領域に加え、そのN末端部にプロ領域およびエクステンション領域をもつ。全てのサブユニットには糖鎖が付加される。一方、11Sグロブリンは、プロ型として生合成され、その後プロセシングを受けることにより酸性鎖と塩基性鎖に切断され、それに伴い構造変化をすることにより成熟型となる。大腸菌は糖鎖を付加できず、プロセシング酵素をもたないので、大腸菌発現系を利用することにより糖鎖をもたない7Sグロブリンとプロ型の11Sグロブリンが得られる。大腸菌発現系により7Sグロブリンや11Sグロブリンの各サブユニットの組み換え型を調製するとともにタンパク質工学的に部分的に改変したものも調製し、これらの特性を比較した。さらに、一部のサブユニットを欠損するダイズ系統も利用し、成熟型の分子種についても調製し、それらの特性についても比較した。7Sグロブリンに関して、食品に関わる特性にエクステンション領域や糖鎖が非常に重要であることを示した。また、11Sグロブリンはプロセシングを伴う構造変化により、特性も変化することが分かった。
一方、大豆タンパク質には中性脂肪の調整機能などの重要な生理機能性ももつことが知られる。生理機能やワクチン機能をもつペプチドを利用することにより、新たな機能を大豆タンパク質に付加できる可能性がある。そこで、7Sおよび11Sグロブリンの立体構造データを参考に免疫賦活活性や認知症ワクチン効果をもつ配列の導入などを行い、大豆貯蔵タンパク質にそれらの機能を付加することが可能であることを示した。また、食の安全性の点から大豆アレルギーについても分子レベルでの解析が必要とされている。報告されている大豆タンパク質の組換えタンパク質を作製し、それらの患者血清に対する感作頻度を明らかにすることにより、大豆における重要な抗原を明確にした。さらに、新規な抗原を明らかにすることにも成功した。
以上の様に、組み換えタンパク質を利用した解析により、大豆種子タンパク質の個々の特性と構造が明確になった。さらに、それらの知見は新たな機能をもつ大豆種子タンパク質を設計および開発するための基盤となっている。今後、さらに食品に関連する様々な植物種子の貯蔵タンパク質を含めた種子タンパク質の解析が進展することを期待したい。
丸山 伸之(まるやま のぶゆき)
略歴:1998年 京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了,1998年 京都大学食糧科学研究所助手,2001年 京都大学大学院農学研究科助手(改組による所属変更),2006年 京都大学大学院農学研究科助教授(名称変更により准教授), 2018年 京都大学大学院農学研究科教授.日本農学進歩賞(2006年,財団法人 農学会),日本農芸化学奨励賞(2009年,社団法人 日本農芸化学会),三島海雲学術賞(2013年 財団法人 三島海雲記念財団)
大豆は11Sグロブリンおよび7Sグロブリンを主要な貯蔵タンパク質としており、おのおのが固有の優れた食品に関連する特性をもつ。両グロブリン共に複数のサブユニットからなる多量体構造を取るため、大豆種子からサブユニット組成の単一なグロブリン分子種を調製することは難しく、私が京都大学食糧科学研究所(内海研究室)において研究に参加したころにはサブユニットごとの加工特性についてはほとんど知見が得られていなかった。そこで、貯蔵タンパク質の遺伝子情報を手掛かりに遺伝子工学的手法およびタンパク質工学的手法を用いて大豆グロブリンの食品に関わるタンパク質特性について詳細に明らかにすることが私の研究のスタートとなった。
大豆7Sグロブリンにはα,α’,βの3種のサブユニットが存在し、αおよびα’サブユニットは共通のコア領域に加え、そのN末端部にプロ領域およびエクステンション領域をもつ。全てのサブユニットには糖鎖が付加される。一方、11Sグロブリンは、プロ型として生合成され、その後プロセシングを受けることにより酸性鎖と塩基性鎖に切断され、それに伴い構造変化をすることにより成熟型となる。大腸菌は糖鎖を付加できず、プロセシング酵素をもたないので、大腸菌発現系を利用することにより糖鎖をもたない7Sグロブリンとプロ型の11Sグロブリンが得られる。大腸菌発現系により7Sグロブリンや11Sグロブリンの各サブユニットの組み換え型を調製するとともにタンパク質工学的に部分的に改変したものも調製し、これらの特性を比較した。さらに、一部のサブユニットを欠損するダイズ系統も利用し、成熟型の分子種についても調製し、それらの特性についても比較した。7Sグロブリンに関して、食品に関わる特性にエクステンション領域や糖鎖が非常に重要であることを示した。また、11Sグロブリンはプロセシングを伴う構造変化により、特性も変化することが分かった。
一方、大豆タンパク質には中性脂肪の調整機能などの重要な生理機能性ももつことが知られる。生理機能やワクチン機能をもつペプチドを利用することにより、新たな機能を大豆タンパク質に付加できる可能性がある。そこで、7Sおよび11Sグロブリンの立体構造データを参考に免疫賦活活性や認知症ワクチン効果をもつ配列の導入などを行い、大豆貯蔵タンパク質にそれらの機能を付加することが可能であることを示した。また、食の安全性の点から大豆アレルギーについても分子レベルでの解析が必要とされている。報告されている大豆タンパク質の組換えタンパク質を作製し、それらの患者血清に対する感作頻度を明らかにすることにより、大豆における重要な抗原を明確にした。さらに、新規な抗原を明らかにすることにも成功した。
以上の様に、組み換えタンパク質を利用した解析により、大豆種子タンパク質の個々の特性と構造が明確になった。さらに、それらの知見は新たな機能をもつ大豆種子タンパク質を設計および開発するための基盤となっている。今後、さらに食品に関連する様々な植物種子の貯蔵タンパク質を含めた種子タンパク質の解析が進展することを期待したい。