The 71th Annual Meeting of JSFST

Presentation information

Oral presentation

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Lp] Physical property of food

Sat. Aug 31, 2024 2:30 PM - 4:30 PM Room L (2F N205)

座長:藤井 修治(東洋大学)、小川 剛伸(京都大学)

3:00 PM - 3:15 PM

[3Lp-03] Examination of structural factors related to drip reduction in frozen carrots

*Ichinobe Aika1, Inaoka Tomokazu1, Murai Takuya1 (1. Sakamoto Yakuhin Kogyo Co., Ltd.)

Keywords:Frozen Vegetable, Frozen Carrot, Glycerol, Structural Observation, Low-Vacuum Scanning Electron Microscope

【目的】 一般的に冷凍野菜は,製造時のブランチング(酵素の不活性化を目的とした加熱処理)やその後の冷解凍によって軟化し,ドリップを生じることで,食感が損なわれる.これは,加熱と氷結晶によって細胞が損傷することで硬さと保水力が失われるためと考えられる.これまで,ブランチング工程にグリセリンと塩化ナトリウムを加えることで,無添加に比べて有意にドリップ量が減少することを確認している.また,冷凍野菜の電子顕微鏡での観察により,組織の構造が損傷した場合にドリップ率が増加することが知られている.よって本研究では,ドリップ量低減の作用機序を解明するため,ブランチング工程へのグリセリンと塩化ナトリウムの配合による組織の構造とドリップ量との関係を検証した.
【方法】 ニンジンを1辺10 mmの立方体に切り出し,試料として用いた.ブランチングとして90℃で3分間熱湯にて処理し,‐20℃にて1日試料を保存した.25℃で試料を解凍し,ドリップ量と組織の構造を評価した.クリープメータ(山電)にてくさび形のプランジャーを用いて圧縮試験を行い,その際に試料からにじみ出た水の量をドリップ量とした.組織構造については,冷解凍後のニンジン試料をカミソリで切り出し,断面を低真空SEMで観察した.
【結果】 無添加または塩化ナトリウムを0.9 wt%添加した試料は,組織中に大きな空隙が生じ,ドリップ量が増加した.グリセリンを10 wt%と塩化ナトリウムを0.9 wt%添加した試料は,組織の構造の変化が抑制され,ドリップ量が少ない傾向にあった.しかし,塩化ナトリウムを4.1 wt%配合した試料は大きな空隙がないにも関わらずドリップ量は増加した.以上の結果から,冷凍ニンジンのドリップを抑制するためには,冷解凍による組織構造の変化を抑えることに加え、他の要素も関与していることが示唆された.