[PA-78] 二峰性O/Wエマルションのin vitro消化性評価:液滴径および乳化剤の影響
【目的】超高齢社会を迎えた我が国において,脂質等の栄養成分の選択的摂取は重要な課題である.エマルションは,栄養成分の消化・吸収性を制御可能な食品および食品素材として注目されている.我々は,2種類の独立した滴径分布を有する二峰性エマルションを提案し,作製および物理特性の検討を進めてきた.これにより,単一種類のエマルションでは困難であった消化・吸収性の段階的制御も期待される.本研究では,異なる組成で作製・混合された二峰性O/Wエマルションのin vitro胃腸消化特性を評価した.【方法】連続相として1.0 wt % Tween 20水溶液,分散相として精製大豆油を使用した.シラス多孔質ガラス膜(SPG膜,平均細孔径1,10,50 ㎛)を装着した乳化モジュールを用いて,液滴サイズが異なる単分散O/Wエマルション(分散相体積分率(φd):10 vol%)を調製した.調製したエマルションのうち,2種類を等量混合させたものを二峰性エマルションとした.各エマルション試料と人工胃液を等量混合させ,恒温振とう機を用いてin vitro胃消化試験(37 ℃,115ストローク,2時間)を行った.さらに,胃消化試験後の試料に等量の人工小腸液を加え,pHスタット法により,in vitro小腸消化試験(37 ℃,2時間)を行った.小腸消化試験中のNaOH滴定量から遊離脂肪酸(FFA)放出率を算出した.【結果】単分散エマルションおよび二峰性エマルションにおいて,胃消化後の粒度分布は,作製直後と比較してほとんど変化しなかった.小腸消化後におけるエマルションのFFA放出率は,平均液滴径が小さいものほど高い傾向にあり,FFA放出率は26~37%であった.単分散エマルションおよび二峰性エマルションにおける液滴表面積とFFA放出率の間には,正の相関がみられた.本研究は,公益財団法人東洋食品研究所の助成を受けた.