日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムB

[SB1] シンポジウムB1

2024年8月30日(金) 09:00 〜 11:45 S4会場 (3F N301)

世話人:清水 宗茂(東海大学)

10:55 〜 11:30

[SB1-04] フレイル対策におけるイミダゾールジペプチドの可能性

*佐藤 三佳子1 (1. 日本ハム株式会社 中央研究所)

キーワード:機能性食品、フレイル、イミダゾールジペプチド、カルノシン、アンセリン

    【講演者の紹介】佐藤三佳子(さとうみかこ):略歴:1991年 日本ハム株式会社入社 中央研究所配属  一貫して食品の健康機能性研究に携わる.

 日本老年医学会によると,フレイルとは健康と要介護の中間であって可逆的な状態を指すが,超高齢化がすすむ日本では後期高齢者の増加が著しく,プレフレイルからフレイルを経由して要介護へと進行する人口の急増が問題となっている.このフレイルサイクルの進行を踏みとどめる対策は,自立し社会貢献をしつづける人材の確保につながり活気ある社会の存続を目指す我が国の最重要課題と言える.
 当社中央研究所では,1999年ごろより食肉ならびにその副産物の健康機能性研究に着手し,コラーゲン,エラスチン,イミダゾールジペプチドなどを健康機能性食品素材として開発・発売を進めてきた.中でも食肉有用成分であるイミダゾールジペプチドは開発当初,アスリートが好む鶏胸肉中に豊富に含有されることからスポーツ栄養への応用を目指したが,研究の進展により,抗疲労効果,筋力維持,認知機能の維持等,高齢者へこそ有用な機能が確認された.イミダゾールジペプチドは,イミダゾール基を有するジペプチドの総称であり,カルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン),アンセリン(β-アラニル-1-メチル-L-ヒスチジン)が良く知られている.元来,脊椎動物の筋,脳に豊富に含まれその機能維持に寄与すると考えられており,その関連研究は世界中で進行し多様な機能が報告されている.一方,食肉・魚肉に豊富に含まれ日常的に経口摂取している安全性の高い成分であり,多機能性と相まって栄養・運動・社会参加といった多面的な対策を必要とするフレイル対策に有効であると期待される.本講演では,フレイル対策におけるイミダゾールジペプチドの多様な可能性について紹介したい.
 現在,当社グループは「たんぱく質を、もっと自由に。」をグループVisionとして掲げており,たんぱく質の可能性の追求に全社を挙げて取り組んでいる.その中で,2022年4月に東京大学大学院 新領域創成科学研究科に社会連携講座(講座名称:食の未来エイジングデザイン研究,代表教員:久恒辰博准教授)を設置した.本講座では健康寿命延伸が大きなテーマであり,サルコペニア・フレイル対策を重要課題として,地域住民を対象とした疫学調査と介入試験により徐々に成果が得られつつある.本成果の社会実装についても本講座にて鋭意検討を行っている.