2:20 PM - 2:45 PM
[SC1-01] Immune improving activities of sulfated polysaccharides "fucoidan" from brown seaweeds
Keywords:fucoidan, sulfated polysaccharides, immune modulation, anti-tumor, infectious diseases
宮﨑 義之(みやざき よしゆき):九州大学大学院農学研究院食品免疫機能分析学(寄附講座) 准教授
略歴:1997年愛媛大学農学部卒,同年九州大学大学院生物資源環境科学研究科に進学後,2003年同院にて博士後期課程を修了して博士(農学)を取得.2003年科学技術振興事業団(PREST0)ポスドク研究員(九州大学生体防御医学研究所に勤務)の後,2004年佐賀大学医学部助教に就任.2010年からNPOフコイダン研究所にて主任研究員・理事長を務め,2014年九州大学大学院農学研究院学術研究員を経て,2016年より現職.14年に亘ってフコイダン×免疫研究に取り組む.
フコイダンは,モズクやワカメおよびコンブなど,日々の食事でも馴染み深い海藻(その内の褐藻類)に含まれるヌメリの成分である.湿重量あたり数%程度の微量成分でありながら,藻体表面を覆うことで,乾燥や傷害そして病原体の侵入を防ぐバリアとして,元来より「守るちから」を有している.私たちの健康維持に資する生理学的効果については,1990年代に報告されたがん細胞におけるアポトーシス誘導活性を発端に機能性食品素材として注目されるようになり,以降,生活習慣病予防効果,血液凝固阻害作用および抗ウイルス作用など様々な学術知見が報告されている.我々もまた,1999年から本格的なフコイダン研究に着手し,免疫増強効果を中心に,がん治療サポートにおけるフコイダンの有効性検証と作用機序の解明に取り組んできた.本講演では,抗腫瘍免疫向上作用をはじめとする,がんや感染症の発症予防に資するフコイダンの生理機能について紹介する.
免疫は,生体外異物と自分自身を識別し,外敵として侵入する病原体や体内で変異したがん細胞などの危険因子の除去にはたらく組織化された生体防御機構であり,私たちの健康維持における抵抗力を生み出す要(かなめ)のシステムである.生後一定期間は母乳から得られる抗体によって守られ,外敵の攻撃に曝されながら徐々に抵抗力を高めていくが,20才前後をピークに免疫力は低下し始める為,加齢に伴い病気に罹り易く,また,回復が遅くなる.免疫力低下の一つの表れが癌の発症であり,我々は,食を通した免疫力の維持と癌発症の予防をテーマに研究を進め,動物試験等の結果から,フコイダン摂取がNK細胞(がんの攻撃と排除を担うエフェクター免疫細胞)の活性化と腫瘍形成の抑制に効果を示すことを明らかにしている.また,抗がん剤の副作用による免疫力の低下や腫瘍の形成や転移を助長する血管新生を抑えるフコイダンの生理活性を証明し,更に,がん抗原ワクチンの投与によるエフェクター細胞の誘導効果を増強することが示され,化学療法,放射線療法および免疫療法などの様々な既存のがん治療のサポートにおけるフコイダンの有効適用が期待される.
一方,病原体感染に対する免疫応答の制御についても,細胞培養試験や動物試験によってフコイダンの有効性を検証している.その中で,フコイダンが樹状細胞(免疫応答の制御に中心的役割を担う免疫司令塔細胞)の活性化を通して感染免疫の増強に寄与ことを見出した.また,別の検証試験においては,フコイダンが感染症の重症例にしばしばみられる過度の炎症応答に対して抑制効果を発揮することを明らかにしており,フコイダンの摂取は免疫バランスの維持に有効であると考えられる.
我々のフコイダン研究とその社会実装化の取り組みは,あくまで食品利用を目指しており,動物試験やヒト対象のパイロット試験は,全てフコイダンの摂食または経口投与により実施してきた.それらの検討から,フコイダンの作用場は腸管であると推察され,小腸で異物監視にあたる免疫細胞(特に,樹状細胞)の活性制御や大腸における腸内細菌叢の改変など,腸内環境を整えるフコイダンの効果について今後も継続的に検証し,フコイダンの有用性と作用機序の詳細を明らかにしていきたい.
略歴:1997年愛媛大学農学部卒,同年九州大学大学院生物資源環境科学研究科に進学後,2003年同院にて博士後期課程を修了して博士(農学)を取得.2003年科学技術振興事業団(PREST0)ポスドク研究員(九州大学生体防御医学研究所に勤務)の後,2004年佐賀大学医学部助教に就任.2010年からNPOフコイダン研究所にて主任研究員・理事長を務め,2014年九州大学大学院農学研究院学術研究員を経て,2016年より現職.14年に亘ってフコイダン×免疫研究に取り組む.
フコイダンは,モズクやワカメおよびコンブなど,日々の食事でも馴染み深い海藻(その内の褐藻類)に含まれるヌメリの成分である.湿重量あたり数%程度の微量成分でありながら,藻体表面を覆うことで,乾燥や傷害そして病原体の侵入を防ぐバリアとして,元来より「守るちから」を有している.私たちの健康維持に資する生理学的効果については,1990年代に報告されたがん細胞におけるアポトーシス誘導活性を発端に機能性食品素材として注目されるようになり,以降,生活習慣病予防効果,血液凝固阻害作用および抗ウイルス作用など様々な学術知見が報告されている.我々もまた,1999年から本格的なフコイダン研究に着手し,免疫増強効果を中心に,がん治療サポートにおけるフコイダンの有効性検証と作用機序の解明に取り組んできた.本講演では,抗腫瘍免疫向上作用をはじめとする,がんや感染症の発症予防に資するフコイダンの生理機能について紹介する.
免疫は,生体外異物と自分自身を識別し,外敵として侵入する病原体や体内で変異したがん細胞などの危険因子の除去にはたらく組織化された生体防御機構であり,私たちの健康維持における抵抗力を生み出す要(かなめ)のシステムである.生後一定期間は母乳から得られる抗体によって守られ,外敵の攻撃に曝されながら徐々に抵抗力を高めていくが,20才前後をピークに免疫力は低下し始める為,加齢に伴い病気に罹り易く,また,回復が遅くなる.免疫力低下の一つの表れが癌の発症であり,我々は,食を通した免疫力の維持と癌発症の予防をテーマに研究を進め,動物試験等の結果から,フコイダン摂取がNK細胞(がんの攻撃と排除を担うエフェクター免疫細胞)の活性化と腫瘍形成の抑制に効果を示すことを明らかにしている.また,抗がん剤の副作用による免疫力の低下や腫瘍の形成や転移を助長する血管新生を抑えるフコイダンの生理活性を証明し,更に,がん抗原ワクチンの投与によるエフェクター細胞の誘導効果を増強することが示され,化学療法,放射線療法および免疫療法などの様々な既存のがん治療のサポートにおけるフコイダンの有効適用が期待される.
一方,病原体感染に対する免疫応答の制御についても,細胞培養試験や動物試験によってフコイダンの有効性を検証している.その中で,フコイダンが樹状細胞(免疫応答の制御に中心的役割を担う免疫司令塔細胞)の活性化を通して感染免疫の増強に寄与ことを見出した.また,別の検証試験においては,フコイダンが感染症の重症例にしばしばみられる過度の炎症応答に対して抑制効果を発揮することを明らかにしており,フコイダンの摂取は免疫バランスの維持に有効であると考えられる.
我々のフコイダン研究とその社会実装化の取り組みは,あくまで食品利用を目指しており,動物試験やヒト対象のパイロット試験は,全てフコイダンの摂食または経口投与により実施してきた.それらの検討から,フコイダンの作用場は腸管であると推察され,小腸で異物監視にあたる免疫細胞(特に,樹状細胞)の活性制御や大腸における腸内細菌叢の改変など,腸内環境を整えるフコイダンの効果について今後も継続的に検証し,フコイダンの有用性と作用機序の詳細を明らかにしていきたい.