The 71th Annual Meeting of JSFST

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Symposia

シンポジウムC

[SC1] シンポジウムC1

Sat. Aug 31, 2024 2:15 PM - 5:00 PM Room S4 (3F N301)

Caretaker:Tomio Yabe

3:10 PM - 3:35 PM

[SC1-03] Physiological effects of resistant glucan

*Hiroyuki Bito1 (1. Nihon Shokuhin Kako Co., Ltd. Research Institute)

Keywords:dietary fiber, resistant glucan, IgA

    尾藤 寛之(びとう ひろゆき):日本食品化工株式会社研究所 研究一課
    略歴:2010年静岡大学農学部卒,2012年静岡大学大学院農学研究科修了,同年日本食品化工株式会社研究所,2016年同社新素材事業推進室異動,2020年同社研究所異動,現在に至る.

    単糖やオリゴ糖は酸触媒下で加熱すると重合することが知られているが,我々は活性炭が酸と同様に糖重合反応の触媒として作用することを見出した.活性炭の触媒能は表面に存在するカルボキシ基やフェノール性水酸基等の酸性官能基によるものと考えられる.本反応で得られる多糖は様々なグリコシド結合がランダムに存在する多分岐構造となり,この構造が消化酵素に対する抵抗性を示し,食物繊維として機能する生理学的特徴をもたらす.我々はグルコースシラップを活性炭存在下で加熱して得られた多糖の難消化性画分を難消化性グルカン(RG)と命名した.本講演ではこれまでに得られたRGの生理機能に関する知見について紹介する.
    消化管内動態:RGの消化管内動態を理解するため,被験者にグルコースまたはRGを摂取させ摂取前後の血糖値を測定したところ,グルコース群は一般的な血糖応答を示したのに対し,RG群は摂取前から摂取後120分まで血糖値の変動は認められなかった.また,被験者にフラクトオリゴ糖(FOS)またはRGを摂取させ,摂取後14時間までの呼気中水素ガス濃度を測定したところ,RGは摂取後に呼気中水素ガス濃度を殆ど増加させず,RG群の呼気中水素ガス曲線下面積はFOS群の7%程度であった.以上の通り,RGは小腸で消化吸収されず,腸内細菌による発酵も殆ど受けないことが確認されている.
    整腸作用:SD系雄性ラットに5%RG飼料を4週間摂取させると,糞便重量及び糞便水分量を増加させ,盲腸内のBifidobacterium属やLactobacillus属を増殖させることが確認されている.便秘傾向の被験者に一日当たり5 gのRGを2週間摂取させると,同量のデキストリン摂取時と比較して排便回数の有意な増加が認められた.これら結果から,RGは糞便水分量を増加させることにより,便通を改善する効果が期待される.
    食後血糖値上昇抑制作用:糖尿病境界域の被験者に負荷食品と同時にデキストリン5 gまたはRG5 gを摂取させ,摂取前及び摂取後120分までの血糖値を測定した結果,RG群はデキストリン群と比較して,摂取後60分及び90分で有意に低い血糖値を示した.また,血糖値曲線下面積においてもRG群はデキストリン群より有意に低値を示した.以上より,RGは他の食物繊維同様に食後の血糖値上昇を抑制する作用を有することが確認されている.
    腸管IgA分泌促進:BALB/cA雄性マウスに対照飼料,3%高アミローススターチ食,3%FOS食または3%RG食を5週間摂取させ,5週目に2日間の糞便を回収し,糞便中IgA量を測定した結果,FOS群及びRG群は対照群より有意に高い値を示し,更にRG群はFOS群よりも有意に高値であった.次の試験ではDP5を基準に低分子RGと高分子RGに分画したRGを使用し,同様に9週間摂取時の糞便中IgA量を3週毎に測定した.低分子RG群は対照群と比較して3週目ではIgA量の増加が認められず,6,9週目で有意な増加を示した一方,高分子RG群は3,6及び9週目で対照群より有意に高いIgA量を示し,増加量は高分子RGの方が顕著であった.RGは糞便中IgA量を増加させ,その作用機序は低分子と高分子で異なる可能性が示唆された.