第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

ポスター

脳・脊髄-拡散基礎

脳・脊髄-拡散基礎2

2014年9月19日(金) 09:30 〜 10:12 ポスター会場 (5F ロビー)

座長:酒井晃二(京都大学医学研究科 人間健康科学系専攻先進医療機器開発学)

[P-2-147] fMRIの賦活部位情報をseed pointに用いたHARDIによる顔面運動神経線維の描出

山崎雅史1, 八木一夫1, 小野寺聡之1, 丹綾香1, 藤浪喜久夫2 (1.首都大学東京大学院人間健康科学研究科 放射線科学域, 2.東京都保健医療公社豊島病院 放射線科)

【目的】
大脳白質神経線維の描出法であるDTTでは、拡散異方性の指標としてFAが採用されている。FAによるfiber trackingの問題点には、1つのボクセル内に走行方向が異なる線維が複数存在すると拡散異方性が低下してしまう。線維の走行が交差・近接している部位では、FAが低下しfiber tracking不能となることがある。HARDIでは、方位分布関数を導入することで、MPG印加軸数を増やすほど角度分解能の向上が期待される。近年、HARDIを用いた研究では顔面運動領域に到達する皮質脊髄路の描出が可能という報告がある。しかし、ROIの設定は作成者によって手動で行われており、客観性に問題がある。そこで、顔面運動をタスクとするfMRIにて撮像を行い、その賦活部位情報をseed pointに設定することで、機能情報を有する皮質脊髄路の描出の可能性と精度について検討した。
【方法】
対象は本研究に同意を得た健常ボランティア。装置はシーメンス社製1.5T MRIを使用した。HARDIに用いたDWIは基礎実験の結果から64軸とした。顔面運動のタスクとして舌の運動と発話を行った。撮像したデータはSPM8を用いた統計解析により賦活部位情報を出力した。その情報をseed pointに設定し、皮質脊髄路の描出を試みた。また、描出した皮質脊髄路に対し、DTT解析の経験が十分にある医師および診療放射線技師により視覚評価を行った。
【結果】
fMRIによって得られた顔面運動の賦活部位をseed pointに設定し、tracking法にHARDIを使用することによって、顔面運動領域に到達する皮質脊髄路の描出は可能である。また視覚評価の結果から、HARDIによって描出した皮質脊髄路の走行はほぼ神経解剖学的に構造と近似した。
【考察】
顔面領域に到達する皮質脊髄路は、走行経路が上縦束と重複し、交差・近接する線維が部分容積効果によって平均化されてしまうため、従来のDTTでは描出が困難であった。それに対しHARDIでは、方位分布関数を導入することで、ボクセル内に複数の線維が通過していても、平均化されず全ての方向に計算が可能となる。また、顔面運動の賦活部位情報をseed pointとすることで、走行精度と運動機能情報を有した皮質脊髄路が描出することが出来る。