日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(一般) (桜)

[PG01-27] シロアリの内源性木材消化酵素遺伝子の多様性と発現解析

◯徳田 岳1、関根 麗子1、渡辺 裕文2 (1. 琉球大・熱生研、2. 農研機構・生物研)

近年の研究では食植性甲虫が植物細胞壁を分解する多様な内源性酵素を微生物からの遺伝子水平伝搬によってゲノム中に獲得していることが明らかとなっており、原始的なシミ目の昆虫にもセルロースやヘミセルロース分解に対応する多様な内源性植物細胞壁分解酵素の存在が示唆されている。ところが、シロアリにおいては腸内微生物が多様な木材分解酵素を生産することが明らかになってきた一方で、シロアリ自身による木材分解の仕組みには不明な点が多い。そこで、ゲノム配列が明らかになったヤマトシロアリから木材分解酵素遺伝子を探索し、食植性甲虫と比較したところ、ヤマトシロアリの内源性木材消化酵素はセルロース分解酵素のみに限定されるが明らかとなった。また、RNA-seqによるヤマトシロアリ唾液腺と中腸における各遺伝子の発現プロファイルを検討したところ、セルロース分解酵素遺伝子のホモログのうち、ごく一部のみが主に唾液腺で高発現しており、可溶性多糖モノオキシゲナーゼのホモログのひとつが中腸で高発現していることが明らかとなった。このことから、シロアリはセルロース分解酵素遺伝子ホモログの一部を活用して消化管内でセルロースの部分分解を行うものの、ヘミセルロース分解に関しては共生微生物に大きく依存している事が明らかとなった。