日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム1)

2024年3月30日(土) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS02-45] ヨコヤマヒメカミキリによる東京都利島のヤブツバキ落枝被害と本種の発育特性

◯押野 任志1、加藤 綾奈2、大井田 寛1 (1. 法政大院、2. 東京都農セ)

日本有数の油糧用ツバキの産地である利島では、近年、ヨコヤマヒメカミキリによる枝の切断被害(以下、落枝)が発生し、椿油の減収が懸念されている。本種幼虫は落枝を発生させ、その内部で羽化まで過ごすことが知られるが、詳しい生態は未解明である。そこで、本種の発育特性と野外での発生消長を調査した。飼育実験の結果から、卵、幼虫、蛹の発育零点はそれぞれ15.8、10.6、14.4℃、有効積算温度はそれぞれ84.7、1428.6、108.9日度と推定された。また、2か所のツバキ圃場で約1ヶ月(成虫発生が多い6、7月は約2週間)ごとに落枝を採取し、切断面直径と落枝内の幼虫の体長を調査したところ、体長は直径11~15mmの落枝や4月~7月上旬に採取した落枝で有意に大きかった(体長を応答変数、調査時期と枝径を説明変数、圃場をランダム効果とするGLMM)。加えて、黄色衝突板トラップを設置し、成虫の誘殺を調査したところ、6月上旬から7月下旬に成虫が得られた。以上より、本種の生活環は孵化翌年の初夏から夏に蛹化、羽化する年一化であることが明らかとなった。また、直径11~15mmの枝に大型の幼虫が多かったことから、この太さの落枝を重点的に圃場から除去することが防除に有効であると考えられる。