日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W13] 第25回昆虫の季節適応談話会

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 F会場 (小会議室2)

世話人:田中一裕、後藤慎介

19:00 〜 19:30

[W13-02] マダラスズの母性休眠誘導の内分泌機構

◯清水 悠太1 (1. 大阪市大院・理)

温帯に生息する昆虫の多くは光周性によって季節の到来を予測し、休眠に入ることで発育を停止または遅延する。一部の種では、母親が光周期を読取り、子世代にその情報を伝えることで休眠を誘導する。これを母性休眠誘導という。マダラスズ(バッタ目ヒバリモドキ科)は草地に生息する小型のコオロギで、メス成虫は長日条件下では速やかに発育する非休眠卵を産下する。一方、短日条件下では細胞性胞胚期で発生を停止する休眠卵を産下する。本種の母性休眠誘導にどのような内分泌機構が関与しているのかは不明であった。本種の母性休眠誘導に関与する内分泌機構を明らかにするため、これまでいくつかの昆虫で母性休眠誘導に重要な役割を果たしていることが示されている幼若ホルモン III(JH III)、20-ヒドロキシエクジソン(20E)、休眠ホルモン(DH)の関与を検証した。メス成虫へのJH IIIや20Eの投与は休眠率に影響しなかったため、JH IIIや20Eは母性休眠誘導に関与していないと考えられた。本種におけるDH遺伝子を同定し、RNA干渉法によって遺伝子発現を抑制したところ、短日条件下で産卵された卵の休眠率が有意に減少した。以上の結果は、DHが本種の母性休眠誘導に重要な役割を担っている可能性を示している。