S01P

[S01P-03] An attempt to estimate tidal response of seismic velocity variations in shallow crust based on spectral analysis

〇Tomoya Takano¹, Kiwamu Nishida¹ (1.Earthquake Research Institute, University of Tokyo)

地震波速度の時間変化を調べることで，地殻構造における応力状態をモニタリングできる可能性がある．観測された地震波速度変化から媒質の応力変化を推定するためには，応力変化に対してどのぐらい速度変化が生じるのか求める必要がある．これまで，応力変化のみによる速度変化を調べるために，人工震源 [e.g. Yamamura et al., 2003]や地震波干渉法 [e.g. Takano et al., 2014]を用いて，既知の入力である地球潮汐に伴う地震波速度変化の検出が行われてきた．特に，雑微動の相関解析に基づく地震波干渉法を利用することで，場所や時間によらずに地震波速度変化の応力感度を推定できるようになった．しかしながら，先行研究では限られた場所と期間における観測結果しか報告されておらず，速度変化の応力感度の地域性や時間変化等の議論はまだ行われていない．そこで，本研究ではHi-net観測データを利用して，速度変化のスペクトル解析に基づき潮汐に伴う地震波速度変化の検出を試みる．

防災科学技術研究所のHi-net観測網において，東北地方に位置する180観測点で2010年から2011年までに記録された連続記録を解析する．日周・半日周変動をする地球潮汐に伴う地震波速度変化を推定するためには，半日以下の時間分解能で速度変化を推定する必要がある．そこで本研究では，同一観測点において雑微動の自己相関関数（ZZ, EE, NN成分）と異なる成分間の相関関数 (ZE, ZN, EN, EZ, NZ, NE成分)を利用して1時間ごとに速度変化を推定する．それぞれの成分でリファレンス波形との時間差を経過時間ごとに計算し，経過時間に対する９成分で求めた時間差の平均値から速度変化を求めた．ここで，速度変化の推定には相関関数の経過時間２から12秒までを用いた．地殻浅部における速度変化の潮汐応答を調べるために，本研究では周波数帯域1-4Hzと3-7Hzを解析した．1時間ごとに得られた地震波速度変化を用いて速度変化のパワースペクトルを計算した．

全観測点でスタックした地震波速度変化のパワースペクトルには，1/7 cycles per dayとその倍数にピーク，また整数のcycles per dayに顕著なピークが見られた．これらは，ノイズ源の週変化や日変化による見かけの速度変化と考えられる．また，振幅の大きい分潮に対応した速度変化のピークが僅かながら見られた．日変化や週変化の影響を受けないN2分潮とM2分潮の周期での速度変化と，GOTIC2 [Matsumoto et al., 2001]により計算した各観測点での潮汐応力を用いて速度変化の応力感度を推定した．応力感度の上限値は(8.7±0.3)×10^-7 Pa^-1と求められ，地表の観測で推定された応力感度値 [Yamamura et al., 2003, DeFazio et al., 1973]と調和的であった．この結果は，Hi-net地震観測網の連続記録から，速度変化の応力感度の時空間変化をモニタリングできる可能性を示唆している．

本研究では，防災科学技術研究所のHi-netのデータを使用させていただきました．記して感謝いたします．