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[T3-O-2] アムンゼン海鮮新世西南極氷床史:Site U1532におけるガウス-ギルバート境界(約360万年前)付近の珪藻化石
キーワード:鮮新世温暖期、IODP Exp.379、アムンゼン海、珪藻、西南極氷床
西南極氷床は気候・海洋変動に極めて敏感で(Paolo et al., 2015),過去に何度も崩壊した可能性が指摘されており(Pollard and DeConto, 2009; Joughin et al., 2014),現代の温暖化に対しても最も顕著に氷床量が減少していることが観測されている(Pritchard et al., 2012; Rignot et al., 2019). IODP第379次航海では,西南極氷床の温暖化に対する応答性を探るべく,アムンゼン海湾入域の沖合2地点(U1532およびU1533)で初めて掘削を行い,約600万年前まで遡ることが可能な深海底堆積物を掘削した (Gohl et al., 2019).サイトU1532では,U1532A-Gの7掘削孔(水深3962m)で,最大掘削深度794m(回収率約90%)の掘削に成功した.珪質微化石ならびに古地磁気の船上分析により,中新世メッシニアン期末期(〜5.7Ma)以降,概ね連続した堆積物であること,堆積速度は当初の予想より遙かに速く, 1000年で最大20-60cmを超えていることが明らかになった.従来の南極周辺掘削地点に比べ堆積速度が極めて速く,青緑色の生物源堆積物濃集層・厚い層状泥質岩層の互層からなる得異な鮮新統が得られ(生物源堆積物濃集層の下限は漸位的,IRDを伴い,上限は急変),氷床の拡大・縮小がダイナミックに繰り返されてきたことが分かった(Gohl et al., 2021).
そこで我々は,鮮新世温暖期地磁気逆転層準(~3.33Ma, 3.6Ma,4.30Ma, 4.63Ma)に着目し,1)微化石ならびに岩相から堆積シーケンスを読み解き,2)珪藻や砕屑物粒子の特徴から,現地表層の海洋動態と,後背地等からの再移動・再堆積物を識別し,アムンゼン海湾入部西南極氷床の動態を復元,3)他海域と高確度での対比により,イベントの同時性・異時性等を検討することとした.
コアU1532-7H内において明瞭なガウス-ギルバート境界(3.596Ma, GMT2020)が確認され(146.4mbsf),帯磁率の減少や色味の顕著な変化とともに,珪藻に富んだ堆積物層が認められた.5〜40cm 間隔(5cm は約280年相当)で珪藻の定量分析を行った.1)沿岸〜外洋のThalassiosira trokina, Stephanopyxis, Stellarima, Thalassiothrixが混在しわずかに産出する層準,2) 季節性の沿岸湧昇種Chaetocerosや中新世化石(Denticulopsisの複数種)他が再堆積として認められる層準,3)外洋域の珪藻(Fragiraliopsis barroniiほか)が主体となって多産する層準,などが識別され,それぞれ氷期堆積体,海新期堆積体,高海水準期堆積体と解釈された.
東南極Wilkes Land沖の先行研究(Armbrecht et al., 2018)と比較すると,群集組成やタイミングに差が認められ,高海水準期にはウィルクスよりより外洋的要素が強かったことが示された.また,ロス海で同時期みとめられたRouxia属が氷期に増える傾向(Konfirst et al., 2011)は認められず,ロス海とは水塊が隔絶されていたことも推察された.
引用文献 :
Paolo, F.S., Fricker, H.A., and Padman, L., 2015. Science, 348(6232):327–331.
Pollard, D., and DeConto, R.M, 2009. Nature, 458(7236):329–332.
Joughin et al., 2014, Science, 344(6185):735-738)
Pritchard et al., 2012. Nature, 484:502–505.
Rignot et al., 2019. PNAS, 116(4):1095-1103.
Gohl, K., et al., 2019. Expedition 379 Preliminary Report: Amundsen Sea West Antarctic Ice Sheet History. International Ocean Discovery Program.
Armbrecht et al., 2018, Marine Micropaleontology, 139:28-41.
Konfirst et al., 2011, Marine Micropaleontology, 80:114-124.
そこで我々は,鮮新世温暖期地磁気逆転層準(~3.33Ma, 3.6Ma,4.30Ma, 4.63Ma)に着目し,1)微化石ならびに岩相から堆積シーケンスを読み解き,2)珪藻や砕屑物粒子の特徴から,現地表層の海洋動態と,後背地等からの再移動・再堆積物を識別し,アムンゼン海湾入部西南極氷床の動態を復元,3)他海域と高確度での対比により,イベントの同時性・異時性等を検討することとした.
コアU1532-7H内において明瞭なガウス-ギルバート境界(3.596Ma, GMT2020)が確認され(146.4mbsf),帯磁率の減少や色味の顕著な変化とともに,珪藻に富んだ堆積物層が認められた.5〜40cm 間隔(5cm は約280年相当)で珪藻の定量分析を行った.1)沿岸〜外洋のThalassiosira trokina, Stephanopyxis, Stellarima, Thalassiothrixが混在しわずかに産出する層準,2) 季節性の沿岸湧昇種Chaetocerosや中新世化石(Denticulopsisの複数種)他が再堆積として認められる層準,3)外洋域の珪藻(Fragiraliopsis barroniiほか)が主体となって多産する層準,などが識別され,それぞれ氷期堆積体,海新期堆積体,高海水準期堆積体と解釈された.
東南極Wilkes Land沖の先行研究(Armbrecht et al., 2018)と比較すると,群集組成やタイミングに差が認められ,高海水準期にはウィルクスよりより外洋的要素が強かったことが示された.また,ロス海で同時期みとめられたRouxia属が氷期に増える傾向(Konfirst et al., 2011)は認められず,ロス海とは水塊が隔絶されていたことも推察された.
引用文献 :
Paolo, F.S., Fricker, H.A., and Padman, L., 2015. Science, 348(6232):327–331.
Pollard, D., and DeConto, R.M, 2009. Nature, 458(7236):329–332.
Joughin et al., 2014, Science, 344(6185):735-738)
Pritchard et al., 2012. Nature, 484:502–505.
Rignot et al., 2019. PNAS, 116(4):1095-1103.
Gohl, K., et al., 2019. Expedition 379 Preliminary Report: Amundsen Sea West Antarctic Ice Sheet History. International Ocean Discovery Program.
Armbrecht et al., 2018, Marine Micropaleontology, 139:28-41.
Konfirst et al., 2011, Marine Micropaleontology, 80:114-124.