[T13-P-3] (エントリー)東京湾における浅部海底地質調査概要
キーワード:東京湾、サブボトムプロファイラ、反射断面、沖積層
関東平野中央部に広がる低地は、中川、荒川、多摩川といった河川によって形成された沖積低地である。沖積層は、地震動の増幅や地盤沈下といった災害に関連することが知られているうえ、人口密集地が広がっており、その構造を研究する意義は大きい。関東平野中央部では 1923 年の大正関東地震以降多くの研究が重ねられている。例えば田辺(2021)は、2 万本以上のボーリング柱状図を利用した沖積層とその基盤の復元を行っている。しかし、関東平野中央部と連続する東京湾の沖積層については、輻輳する海上交通に妨げられ、十分な調査が行われていない。そこで本研究では、東京海洋大学が所有する練習船「神鷹丸」に搭載されたサブボトムプロファイラ(SBP)を用いて、東京湾海底下の反射断面を取得し、層序学、堆積学の見地から解釈を試みた。 東京海洋大学 練習船「神鷹丸」搭載の SBP TOPAS PS18(Kongsberg社製)を使用した。発振間隔は、水深に合わせて変更したが、主に 300〜350 ms である。サンプリングレートは 32 kHz、発振波形は主にチャープ波を使用した。なお、神鷹丸は、船体の大きさが 50 m 以上あり、東京湾においては航路以外の場所をほとんど航行できないため、SBP 断面は主に航路上にて取得した。調査の際の船速は約 9 knotである。 SBP で取得された反射断面の特徴から、本研究では東京湾を、東京湾北部、東京湾南部、南房総沖に分けて記載する。東京湾北部は羽田空港北東沖から東扇島公園沖にかけての海域である。ここでは音響的散乱層が卓越しており内部構造をほとんど観察できないが、成層構造を観察できた羽田空港沖の一部では、不整合を境に地層を 2 層に区分できた。海底に起伏はほとんど認められない。本研究では下位からそれぞれ羽田沖A層、羽田沖B層とした。 東京湾南部は横浜市本牧沖から富津市浜金谷沖にかけての海域である。海域の南側は東京海底谷の谷頭付近に相当するため海底地形は起伏に富むが、それ以外の場所で海底に起伏はあまり認められない。不整合と音響的層相に基づき東京湾南部の地層を、下位から本牧沖A層、本牧沖B層の2層に層序区分した両層とも成層構造が発達する。このうち本牧沖B層は基本的に傾斜する地層で特徴づけられるが、一部でカオティックな反射面が認められる。またこの海域においても一部で音響的散乱層を認めることができる。 南房総沖は、富津市浜金谷沖から館山沖にかけての海域とした。不整合にもとづいて、南房総沖A層と南房総沖B層に区分した。南房総沖A層は成層構造が発達した地層が褶曲を受けて変形していることで特徴づけられる。南房総沖B層もまた成層構造が発達した反射面で特徴づけられるが、南房総沖A層には変形は認められない。 本発表では、これらの結果に加え、海上保安庁水路部が反射法音波探査により取得した東京湾の反射断面を、海上保安庁海洋情報部の許可を得て使用した。