日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

G. ジェネラルセッション

[1poster39-68] G. ジェネラルセッション

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 G1-1_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[G-P-1] IODP Exp.399「生命のビルディング・ブロック」アトランティス岩体掘削速報

*阿部 なつ江1,2、McCaig Andrew3、Lang Susan4、Blum Peter5、野坂 俊夫6、IODP Exp.399 Science Party5 (1. 海洋研究開発機構、2. 金沢大学大学院、3. リーズ大学、4. ウッズホール海洋研究所、5. IODPテキサスA&M大学、6. 岡山大学)

キーワード:蛇紋岩化かんらん岩、斑れい岩、海洋コアコンプレックス、国際深海科学掘削計画、基盤岩掘削

大西洋中央海嶺の北緯30度付近にあるアトランティス岩体は、海洋下部地殻〜最上部マントルの構成岩と考えられる斑れい岩および蛇紋岩化かんらん岩が、海底付近まで露出する海洋コアコンプレックスである。このアトランティス岩体では、これまでに国際深海科学掘削計画(以下IODP)による4回の航海(Exps.304 305、340Tおよび357)にて掘削が行われている。IODP Exp. 399(2023年4月12日から6月12日実施)では、このアトランティス岩体において、海洋コアコンプレックスの形成過程の解明や、海洋地殻や上部マントルと海水との反応過程、地球上の生命に先立つ太古のシステムを示すと思われる水と岩石の間の非生物学的反応の探求、海底下の生命活動を評価することなどを目的とした掘削を行い、岩石コア試料や流体試料の回収を行った。  その結果、既存のhole U1309Dを83m延伸し、1498mbsfまで到達し、さらに孔内からの流体採取に成功した。回収された岩石は下部海洋地殻の典型的な斑れい岩であり、また孔底付近の温度は約140℃で、Exp. 340Tによる測定結果とイほぼ一致した。岩体の南側における蛇紋岩サイト(Hole U1601C)では、予想を大きく上回る掘進率で新たに海底から1267.8mbsfまで掘削し、IODPにおける基盤岩掘削では5番目に深い掘削を成功させた。またこの孔は、これまでの科学掘削における蛇紋岩掘削の200mbsf (Hole 920D)を大きく上回り、71%という高いコア回収率で、手付かずで連続的な岩石試料の回収にも成功した。Hole U1601Cのコアは、少量の斑れい岩の貫入を伴う蛇紋岩化かんらん岩で構成されている。また孔内計測による、温度、密度、気孔率、地震波速度などの連続的なデータ回収、さらに孔内の複数の深さから流体試料を採取した。  今回の掘削により得られた試料やデータを今後分析や解析することで、海洋リソスフェアの構造や海洋コアコンプレックス形成過程の解明、海洋地殻の変質過程、そして地下生命圏における重要なエネルギーとなる水素やメタンなどの発生システムの解明が期待される。さらにアトランティス岩体における1000mを越えるこの2本の掘削孔は、今後も孔内温度や流体組成の変化などの観測の為に利用することが期待される。