[G-P-10] 新潟県糸魚川市に分布するペルム系小滝層の再検討
※発表者変更:髙橋啓太→松岡 篤
キーワード:小滝層、飛騨外縁帯、ペルム系、付加体、糸魚川市、新潟県
【はじめに】
新潟県の糸魚川市には様々な年代の地質体が複雑に分布しており,ペルム系の地質体の1つとして小滝層が定義されている.ヒスイ峡として知られる小滝川や青海川周辺に分布し,秋吉帯の青海石灰岩や中生代の来馬層群,赤禿山層とは断層で接している.小滝層は層序や形成過程について不明な点が多く,宇次原(1985)や河合・竹内(2001),田沢ほか(2002)は付加体として認識している一方で,長森ほか(2010)は岩相や産出化石が飛騨外縁帯と類似している点や付加体の特徴が見られない点を指摘し,飛騨外縁帯の正常層であると述べている.そこで,本研究では小滝層の岩相や構造について調査し,形成過程を明らかにすることを目的として設定した.
【研究手法】
小滝層の模式地である小滝地域の小滝川沿いと、青海川が流れる橋立地域,青海川の支流である尻高沢を対象とした野外調査を実施した.岩相や構造について記載し,ルートマップや柱状図,地質図を作成した.露頭からは適宜岩石サンプルを採取し,薄片を作成して観察した.
【調査結果】
小滝層の岩相は混在岩を主体として,砂岩,礫岩,凝灰岩,石灰岩のほかに,玄武岩やドレライトといった緑色岩類からなる.混在岩は黒色泥岩を基質とし,緑色岩,砂岩,石灰岩を含む.多くが緑色岩ブロック主体であるが,小滝川沿いの西側には石灰岩ブロック主体のものが一部存在する.混在岩についてはブロックの伸張度合いから変形の基準を設け,変形の強弱に応じて露頭を分類した.その結果,いずれの混在岩についても露頭スケール,顕微鏡スケールともに変形構造が確認できたが,小滝川沿いの露頭については,東側では変形の激しい混在岩が,西側ではほとんど変形を受けていない混在岩が見られるなど,場所によって変形の度合いに大きく差があることが分かった.礫岩の露頭は小滝川,尻高沢の両地点で確認している.いずれも砂岩や泥岩,凝灰岩などの堆積岩礫主体であり角礫もしくは亜角礫を示すが,尻高沢の礫岩はほとんど変形を受けていない点,小滝川沿いの礫岩には石灰岩礫が含まれ,フズリナなどの化石が見られる点が相違点として挙げられる.橋立地域には赤色チャートの露頭が存在するほか,下位から層状チャート,凝灰岩,珪質泥岩,泥岩で構成されるチャート砕屑岩シーケンスが確認できた.
【考察】
小滝層に広く分布している混在岩は,付加体を特徴づける岩石の1つである.そこで,本研究では小滝層の混在岩の特徴に着目した.小滝層の混在岩は全体的に変形構造が見られ,ブロックも伸張している.また,方解石の脈も観察できる.このことから,小滝層の混在岩は造構性メランジュの特徴を有していると言える.ただし,小滝川沿いで観察したほとんど変形していない混在岩露頭の存在や場所による変形度合いの差異から,すべて造構性メランジュであると断定することはできない.橋立で観察されたチャート砕屑岩シーケンスもまた付加体を特徴づける産状の1つだが,本調査で観察した混在岩中に赤色チャートのブロックは含まれていなかった.よって,露頭の位置は小滝層の分布域内ではあるが,小滝層には属さないものとして判断した.こうして得られたデータをもとに,長森ほか(2010)で示された小滝層の分布域を,小滝川沿いの来馬層群を境として西側地域と東側地域,橋立地域の計3つのユニットに区分した.本調査で確認できた岩相を基に周辺の他のペルム系と比較すると,岩相の多くは白馬岳地域の栂池コンプレックス(中野ほか,2002)と類似している.国内のペルム系と比較した場合,超丹波帯の大飯層は泥質混在岩や堆積岩礫主体の礫岩が見られる,変形が全体的に延性かつ程度の差が見られるといった点で共通している.
文献:河合政岐・竹内 誠,2001,大阪微化石研究会特別号,12,23-32. / 竹内誠, 2010, 5万分の1地質図幅「小滝地域の地質」,6.飛騨外縁帯,産総研地質調査総合センター, 37-41. / 竹内誠,2002,5万分の1地質図幅「白馬岳地域の地質」,3.古生界,産総研地質調査総合センター,9-21. / 田沢純一ほか,2002,日本地質学会第109年学術大会見学旅行案内書,27-39. / 宇次原雅之,1985,総合研究「上越帯・足尾帯」研究報告,2,159-168.
新潟県の糸魚川市には様々な年代の地質体が複雑に分布しており,ペルム系の地質体の1つとして小滝層が定義されている.ヒスイ峡として知られる小滝川や青海川周辺に分布し,秋吉帯の青海石灰岩や中生代の来馬層群,赤禿山層とは断層で接している.小滝層は層序や形成過程について不明な点が多く,宇次原(1985)や河合・竹内(2001),田沢ほか(2002)は付加体として認識している一方で,長森ほか(2010)は岩相や産出化石が飛騨外縁帯と類似している点や付加体の特徴が見られない点を指摘し,飛騨外縁帯の正常層であると述べている.そこで,本研究では小滝層の岩相や構造について調査し,形成過程を明らかにすることを目的として設定した.
【研究手法】
小滝層の模式地である小滝地域の小滝川沿いと、青海川が流れる橋立地域,青海川の支流である尻高沢を対象とした野外調査を実施した.岩相や構造について記載し,ルートマップや柱状図,地質図を作成した.露頭からは適宜岩石サンプルを採取し,薄片を作成して観察した.
【調査結果】
小滝層の岩相は混在岩を主体として,砂岩,礫岩,凝灰岩,石灰岩のほかに,玄武岩やドレライトといった緑色岩類からなる.混在岩は黒色泥岩を基質とし,緑色岩,砂岩,石灰岩を含む.多くが緑色岩ブロック主体であるが,小滝川沿いの西側には石灰岩ブロック主体のものが一部存在する.混在岩についてはブロックの伸張度合いから変形の基準を設け,変形の強弱に応じて露頭を分類した.その結果,いずれの混在岩についても露頭スケール,顕微鏡スケールともに変形構造が確認できたが,小滝川沿いの露頭については,東側では変形の激しい混在岩が,西側ではほとんど変形を受けていない混在岩が見られるなど,場所によって変形の度合いに大きく差があることが分かった.礫岩の露頭は小滝川,尻高沢の両地点で確認している.いずれも砂岩や泥岩,凝灰岩などの堆積岩礫主体であり角礫もしくは亜角礫を示すが,尻高沢の礫岩はほとんど変形を受けていない点,小滝川沿いの礫岩には石灰岩礫が含まれ,フズリナなどの化石が見られる点が相違点として挙げられる.橋立地域には赤色チャートの露頭が存在するほか,下位から層状チャート,凝灰岩,珪質泥岩,泥岩で構成されるチャート砕屑岩シーケンスが確認できた.
【考察】
小滝層に広く分布している混在岩は,付加体を特徴づける岩石の1つである.そこで,本研究では小滝層の混在岩の特徴に着目した.小滝層の混在岩は全体的に変形構造が見られ,ブロックも伸張している.また,方解石の脈も観察できる.このことから,小滝層の混在岩は造構性メランジュの特徴を有していると言える.ただし,小滝川沿いで観察したほとんど変形していない混在岩露頭の存在や場所による変形度合いの差異から,すべて造構性メランジュであると断定することはできない.橋立で観察されたチャート砕屑岩シーケンスもまた付加体を特徴づける産状の1つだが,本調査で観察した混在岩中に赤色チャートのブロックは含まれていなかった.よって,露頭の位置は小滝層の分布域内ではあるが,小滝層には属さないものとして判断した.こうして得られたデータをもとに,長森ほか(2010)で示された小滝層の分布域を,小滝川沿いの来馬層群を境として西側地域と東側地域,橋立地域の計3つのユニットに区分した.本調査で確認できた岩相を基に周辺の他のペルム系と比較すると,岩相の多くは白馬岳地域の栂池コンプレックス(中野ほか,2002)と類似している.国内のペルム系と比較した場合,超丹波帯の大飯層は泥質混在岩や堆積岩礫主体の礫岩が見られる,変形が全体的に延性かつ程度の差が見られるといった点で共通している.
文献:河合政岐・竹内 誠,2001,大阪微化石研究会特別号,12,23-32. / 竹内誠, 2010, 5万分の1地質図幅「小滝地域の地質」,6.飛騨外縁帯,産総研地質調査総合センター, 37-41. / 竹内誠,2002,5万分の1地質図幅「白馬岳地域の地質」,3.古生界,産総研地質調査総合センター,9-21. / 田沢純一ほか,2002,日本地質学会第109年学術大会見学旅行案内書,27-39. / 宇次原雅之,1985,総合研究「上越帯・足尾帯」研究報告,2,159-168.