10:15 AM - 10:30 AM
[T10-O-6] Provenance study of the gravestone of Toyoshige Yamauchi, 15th lord of the Tosa Domain, by nondestructive analysis of bluestone
Keywords:Provenance study, Bluestone, Grave stone, Magnetic susceptibility, Color measurement, Boring shell
日本各地に点在する近世大名墓所は、近世武家社会の葬送の実態を知る手がかりとなると同時に、墓碑・墓塔の産地・採石場の情報は、当時の物流および文化的な背景を知る手がかりとなる。そこで本研究では、土佐藩主山内家の大名墓を対象に石材の産地同定を行った。
山内家大名墓所は高知市筆山に北麓に造成されており、初代から16代までの藩主、およびその家族の墓石が建てられている。一方、15代藩主山内豊信(容堂)の墓石は、東京都品川区大井公園に隣接した敷地にある。墓石は全体に青緑がかっており、三波川変成帯に分布する「青石」に類似している。大井公園からほど近い場所にある清澄庭園は豊信の墓が建造された時期と同時期(明治初期~中期)に造成されており、また3地域の「青石」が庭石としてふんだんに利用されている。また、全国に流通している有名な青石石材として愛媛県内で採取される「伊予青石」がある。そこで、本研究は豊信の墓石、および清澄庭園の庭石と伊予青石で造られたと推定される愛媛県内の石造物(主に顕彰碑)を対象に調査を行った。携帯型帯磁率測定器(TK-10、Terraplus社)を用いた岩石磁化率測定、小型分光測色計(Spectro1、Variable社)を用いた色測定(L*a*b*表色系による数値化)による非破壊分析を実施して、それぞれの特徴を比較した。
豊信の墓石は高さ2.1m、厚さ0.2mの平板状の自然石から作られている。全体的に青緑がかり、弱い層構造と連続性の乏しい石英脈が確認できる。また、至る所に10mm程度の丸い穴が空いている。磁化率は0.69±0.097×10-3 SI (n=50) を示した。色測定の結果、dark olivish gray(色コード:#70766b)を示し、L*値とa*値はそれぞれ25~55、-4~9を示し、b*値は5.7±1の値を示した。またb*値はa*値と弱い相関を示したが、L*値とは相関関係が認められなかった。穴の断面形状は真円に近い円形をしており、穴の位置はランダムであった。穴の直径が大きくなるほど穴が深くなる傾向が認められたが、深さが20mmより深くなると、直径と深さとの関係は不明瞭になった。
清澄庭園には伊予青石、紀州青石、秩父青石が景石として使用されている。それぞれの磁化率は0.6~0.95(平均値=0.78)×10-3 SI、0.05~1.2(0.72)×10-3 SI、および0.17×10-3 SIを示した。一方、愛媛県西条市で産出された青石は0.59~1.15(0.84)×10-3 SIを示し、伊方町にある石碑と海岸の転石は0.52~1.09(0.77)×10-3 SIを示し、八幡浜市の石碑・海岸の転石は0.59~0.90(0.78)×10-3 SIを示した。また、清澄庭園の伊予青石、および伊方町と八幡浜市の石碑の一部に豊信の墓石と近いb*値を示す景石が認められた。また、伊方町にある3基の石碑、および3カ所の海岸露頭と転石で穴が空いた青石を確認できた。また、「三崎漁師物語り三崎本店」跡地にある石碑の穴の中に、白色の二枚貝の貝殻が確認できた。穴が確認できた3つの青石を対象に直径と深さ分布を計測したところ、いずれも豊信の墓石の特徴と類似性が認められた。特に、道の駅瀬戸農業公園前にある「国道改築記念碑」はその特徴が合致した。
豊信の墓石で確認された穴は、伊方町と八幡浜市の青石で認められた特徴と一致することから、海岸付近に生息する穿孔貝により掘られた巣穴の可能性が高い。また、豊信墓石の磁化率とb*値は同地域の青石と齟齬が認められないことから、豊信の墓石は愛媛県西部の伊方町の海岸で採取された三波川変成岩の転石から製作された可能性を示唆している。伊予青石は大洲市および西条市でも採石されているが、前者は山を削って採石しており、後者は河川敷等から採取されたものであるため、穿孔跡は存在しない。墓石は川石と異なり丸みや光沢が目立たなく、表面がややくすんでいることから海石の特徴を示す。一方、三波川変成帯の緑色片岩である「青石」は愛媛県の伊予青石以外にも、清澄庭園にある紀州青石(和歌山県)、秩父青石(埼玉県)、さらには阿波青石(徳島県)、伊勢青石(三重県)も存在することから、愛媛県以外の青石の特徴、当時の石材の流通過程などについて調査する必要がある。
山内家大名墓所は高知市筆山に北麓に造成されており、初代から16代までの藩主、およびその家族の墓石が建てられている。一方、15代藩主山内豊信(容堂)の墓石は、東京都品川区大井公園に隣接した敷地にある。墓石は全体に青緑がかっており、三波川変成帯に分布する「青石」に類似している。大井公園からほど近い場所にある清澄庭園は豊信の墓が建造された時期と同時期(明治初期~中期)に造成されており、また3地域の「青石」が庭石としてふんだんに利用されている。また、全国に流通している有名な青石石材として愛媛県内で採取される「伊予青石」がある。そこで、本研究は豊信の墓石、および清澄庭園の庭石と伊予青石で造られたと推定される愛媛県内の石造物(主に顕彰碑)を対象に調査を行った。携帯型帯磁率測定器(TK-10、Terraplus社)を用いた岩石磁化率測定、小型分光測色計(Spectro1、Variable社)を用いた色測定(L*a*b*表色系による数値化)による非破壊分析を実施して、それぞれの特徴を比較した。
豊信の墓石は高さ2.1m、厚さ0.2mの平板状の自然石から作られている。全体的に青緑がかり、弱い層構造と連続性の乏しい石英脈が確認できる。また、至る所に10mm程度の丸い穴が空いている。磁化率は0.69±0.097×10-3 SI (n=50) を示した。色測定の結果、dark olivish gray(色コード:#70766b)を示し、L*値とa*値はそれぞれ25~55、-4~9を示し、b*値は5.7±1の値を示した。またb*値はa*値と弱い相関を示したが、L*値とは相関関係が認められなかった。穴の断面形状は真円に近い円形をしており、穴の位置はランダムであった。穴の直径が大きくなるほど穴が深くなる傾向が認められたが、深さが20mmより深くなると、直径と深さとの関係は不明瞭になった。
清澄庭園には伊予青石、紀州青石、秩父青石が景石として使用されている。それぞれの磁化率は0.6~0.95(平均値=0.78)×10-3 SI、0.05~1.2(0.72)×10-3 SI、および0.17×10-3 SIを示した。一方、愛媛県西条市で産出された青石は0.59~1.15(0.84)×10-3 SIを示し、伊方町にある石碑と海岸の転石は0.52~1.09(0.77)×10-3 SIを示し、八幡浜市の石碑・海岸の転石は0.59~0.90(0.78)×10-3 SIを示した。また、清澄庭園の伊予青石、および伊方町と八幡浜市の石碑の一部に豊信の墓石と近いb*値を示す景石が認められた。また、伊方町にある3基の石碑、および3カ所の海岸露頭と転石で穴が空いた青石を確認できた。また、「三崎漁師物語り三崎本店」跡地にある石碑の穴の中に、白色の二枚貝の貝殻が確認できた。穴が確認できた3つの青石を対象に直径と深さ分布を計測したところ、いずれも豊信の墓石の特徴と類似性が認められた。特に、道の駅瀬戸農業公園前にある「国道改築記念碑」はその特徴が合致した。
豊信の墓石で確認された穴は、伊方町と八幡浜市の青石で認められた特徴と一致することから、海岸付近に生息する穿孔貝により掘られた巣穴の可能性が高い。また、豊信墓石の磁化率とb*値は同地域の青石と齟齬が認められないことから、豊信の墓石は愛媛県西部の伊方町の海岸で採取された三波川変成岩の転石から製作された可能性を示唆している。伊予青石は大洲市および西条市でも採石されているが、前者は山を削って採石しており、後者は河川敷等から採取されたものであるため、穿孔跡は存在しない。墓石は川石と異なり丸みや光沢が目立たなく、表面がややくすんでいることから海石の特徴を示す。一方、三波川変成帯の緑色片岩である「青石」は愛媛県の伊予青石以外にも、清澄庭園にある紀州青石(和歌山県)、秩父青石(埼玉県)、さらには阿波青石(徳島県)、伊勢青石(三重県)も存在することから、愛媛県以外の青石の特徴、当時の石材の流通過程などについて調査する必要がある。