[T13-P-11] Shallow Slow Slip Events (SSEs) detected by borehole and DONET observatories: comparison of SSEs between 2020 and 2023 March
Keywords:Pore pressure, Seafloor crustal deformation, Very low-frequency earthquake, Nankai trough
近年、地震や地殻変動を高感度かつ広域にわたって観測する技術の進展によって、通常の地震に比べて時間をかけて断層が滑るために人間では揺れを感じない「スロー地震」の発生が、日本周辺や世界中のプレート沈み込み帯で検知されるようになってきた。この「スロー地震」は、通常の地震に比べて小さい外力によって活動が変化することが知られており、海溝型巨大地震の震源域近傍に分布していることから、南海トラフにおいては、プレート間の固着状況を把握するための重要な監視ツールの一つとなっている。 スロー地震のうち、巨大地震震源域よりも浅部側で起きるスロースリップイベントについては、長期孔内観測装置の間隙水圧計で捉えられるようになってきた。2018年以降は、南海トラフ近傍の観測点C0006がDONETと接続されたことにより、トラフ軸付近でのすべり過程も明らかとなりつつある。2020年3月に発生したスロースリップイベントでは、3点の長期孔内観測点における間隙圧の時間変化およびDONET広帯域地震計による超低周波地震の活動から、すべり域が浅部側に伝播する過程を捉えることに成功した。この解析の際には、孔口あるいは近傍にあるDONETの海底水圧計の記録を用いて、相互相関関数から潮汐応答の時間差を推定し、孔内水圧データとの差分を取ることで海洋擾乱成分の軽減を図った。 この手法を解析処理システムに実装することで、2023年3月に発生した浅部スロースリップイベントについて、発生翌日頃から検知するとともに、C0006におけるナノスケールでの体積歪変化の推移も準リアルタイムで捉えることに成功した。その結果、2023年3月に発生したスロースリップイベントは、2020年3月に発生したスロースリップイベントと、発生領域・体積歪変化率などの点で類似していることが明らかとなった。本講演では、類似点の他に、相違点や解析の現状と課題についても議論する予定である。