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[T5-O-12] P波反射法地震探査からみた糸魚川-静岡構造線活断層系神城断層南部の地下構造
キーワード:糸魚川-静岡構造線活断層系、神城断層、活断層、反射法地震探査、地下構造
【はじめに】
糸魚川-静岡構造線活断層系は本州の中央部を南北に横断する全長約160 kmの活断層系であり(例えば,地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2015, 糸魚川-静岡構造線断層帯の長期評価(第二版)),神城断層は糸魚川-静岡構造線活断層系の最北部に位置している.2014年長野県北部の地震(Mw = 6.2)の際には,神城断層の地表トレースの一部に沿って総延長10 km程度に及ぶ地表地震断層が出現した(Okada et al., 2015, Seis. Res. Lett., 86 , 1287–1300; Katsube at al., 2017, Geophys. Res. Lett., 44 , 6057–6064).2014年地震の震源断層は,余震分布と本震の発震機構から,南北約20 kmに延びる東傾斜の逆断層と推定され,神城断層の一部分(北部区間)とその北方延長が活動したと考えられている(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2014, 2014年11月22日長野県北部の地震の評価).本研究では,地震時に明瞭な地表変位を生じなかった神城断層の南部区間において,その地下構造を明らかにして北部区間の地下構造と比較する目的で,同断層南部の青木湖周辺地区でP波反射法地震探査を実施した.
【反射法地震探査】
本探査は長野県大町市の青木湖西方に位置する青木湖スキー場から青木湖東方1.5 km程度に位置する丸切沢1号砂防堰堤付近へ至る,湖水域区間約0.6 kmを含む,約3.5 kmの測線で実施した(図1).探査測線は,北北東-南南西走向である神城断層とほぼ直交するように設定した.データ取得は共通中間点重合法(例えば,物理探査学会, 1998, 物理探査ハンドブック)によって行った.発震は陸域は中型バイブレーター震源(米国IVI社製のEnviro Vibe)で,湖水域はエアガン(40Cu)で行い,標準発震点間隔は10 mである.また,標準受振点間隔も10 mとして,100 ch以上を同時収録した.データ記録は独立型レコーダー(陸域は米国Geospace社製のGSX,湖水域は同社の独立型海底地震計OBX)を用いて,サンプリング間隔1 msで行った.取得した記録に対して,一般的な共通中間点重合法によるデータ処理の結果,マイグレーション深度変換断面を得た.
【神城断層南部の地下構造】
得られた結果断面では,深度1.5 km程度までの地下構造をイメージングすることができた(図2).断面の特徴を概説すると,青木湖の湖底直下ではほぼ水平な反射面が見られ,青木湖の湖成堆積層だと考えられる.しかし,さらに深部の標高650 m以深では緩やかな東傾斜の反射面が目立ち,この領域は,周囲に比べると高い地震波速度で特徴付けられる(図2のカラー表示).また,さらに深部では,標高-100 m・CMP 360付近から標高-400 m・CMP 160にかけて緩やかな東傾斜の反射面が顕著である.こうした東傾斜の反射面群は糸魚川-静岡構造線の西方に分布する中古生代の基盤岩に相当するものと解釈した.一方,青木湖の東方では,標高500 m以浅では比較的短波長の褶曲が卓越する.さらに深部の標高500~100 mの範囲では,標高400 m前後でCMP 380~280の領域ではほぼ水平な反射面群が分布するのに対して,標高300 m以深でCMP 280~180の領域では東に急傾斜した反射面群が分布する.これらの特徴は,神城断層の地下形状に起因するものと考え,また,青木湖湖底で確認されている断層位置も考慮し,図2の赤線のように神城断層の地下構造を解釈した.
【神城断層と2014年長野県北部の地震】
本探査により神城断層の南部区間は本探査地において深度約700 m以浅でフラット-ランプ型の地下形状をを呈することがわかった.これに対して,2014年地震時に最大変位を生じた同断層北端付近を横切る反射法探査では,地下深部でやや低角化するもののほぼ一様な東傾斜を示す断層面が推定されている(木村ほか, 2018, 日本地球惑星科学連合大会, SSS08-16).また, 2014年の地表地震断層南端付近を横切る反射法地震探査でも,地表地震断層の地下延長はほぼ一様な東傾斜を呈する(文科省・東北大災害研, 2016, 糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測(追加調査)平成27年度 成果報告書).ただし,同探査結果では地表からの深度約400 mで盆地方向前縁(西方)へ分岐した断層はフラット-ランプ型の地下形状を呈しており,この前縁断層では2014年時の地表変位が確認されていない.このように,神城断層では各区間によって深度1 km以浅での地下構造の特徴に違いがあることがわかった.
糸魚川-静岡構造線活断層系は本州の中央部を南北に横断する全長約160 kmの活断層系であり(例えば,地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2015, 糸魚川-静岡構造線断層帯の長期評価(第二版)),神城断層は糸魚川-静岡構造線活断層系の最北部に位置している.2014年長野県北部の地震(Mw = 6.2)の際には,神城断層の地表トレースの一部に沿って総延長10 km程度に及ぶ地表地震断層が出現した(Okada et al., 2015, Seis. Res. Lett., 86 , 1287–1300; Katsube at al., 2017, Geophys. Res. Lett., 44 , 6057–6064).2014年地震の震源断層は,余震分布と本震の発震機構から,南北約20 kmに延びる東傾斜の逆断層と推定され,神城断層の一部分(北部区間)とその北方延長が活動したと考えられている(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2014, 2014年11月22日長野県北部の地震の評価).本研究では,地震時に明瞭な地表変位を生じなかった神城断層の南部区間において,その地下構造を明らかにして北部区間の地下構造と比較する目的で,同断層南部の青木湖周辺地区でP波反射法地震探査を実施した.
【反射法地震探査】
本探査は長野県大町市の青木湖西方に位置する青木湖スキー場から青木湖東方1.5 km程度に位置する丸切沢1号砂防堰堤付近へ至る,湖水域区間約0.6 kmを含む,約3.5 kmの測線で実施した(図1).探査測線は,北北東-南南西走向である神城断層とほぼ直交するように設定した.データ取得は共通中間点重合法(例えば,物理探査学会, 1998, 物理探査ハンドブック)によって行った.発震は陸域は中型バイブレーター震源(米国IVI社製のEnviro Vibe)で,湖水域はエアガン(40Cu)で行い,標準発震点間隔は10 mである.また,標準受振点間隔も10 mとして,100 ch以上を同時収録した.データ記録は独立型レコーダー(陸域は米国Geospace社製のGSX,湖水域は同社の独立型海底地震計OBX)を用いて,サンプリング間隔1 msで行った.取得した記録に対して,一般的な共通中間点重合法によるデータ処理の結果,マイグレーション深度変換断面を得た.
【神城断層南部の地下構造】
得られた結果断面では,深度1.5 km程度までの地下構造をイメージングすることができた(図2).断面の特徴を概説すると,青木湖の湖底直下ではほぼ水平な反射面が見られ,青木湖の湖成堆積層だと考えられる.しかし,さらに深部の標高650 m以深では緩やかな東傾斜の反射面が目立ち,この領域は,周囲に比べると高い地震波速度で特徴付けられる(図2のカラー表示).また,さらに深部では,標高-100 m・CMP 360付近から標高-400 m・CMP 160にかけて緩やかな東傾斜の反射面が顕著である.こうした東傾斜の反射面群は糸魚川-静岡構造線の西方に分布する中古生代の基盤岩に相当するものと解釈した.一方,青木湖の東方では,標高500 m以浅では比較的短波長の褶曲が卓越する.さらに深部の標高500~100 mの範囲では,標高400 m前後でCMP 380~280の領域ではほぼ水平な反射面群が分布するのに対して,標高300 m以深でCMP 280~180の領域では東に急傾斜した反射面群が分布する.これらの特徴は,神城断層の地下形状に起因するものと考え,また,青木湖湖底で確認されている断層位置も考慮し,図2の赤線のように神城断層の地下構造を解釈した.
【神城断層と2014年長野県北部の地震】
本探査により神城断層の南部区間は本探査地において深度約700 m以浅でフラット-ランプ型の地下形状をを呈することがわかった.これに対して,2014年地震時に最大変位を生じた同断層北端付近を横切る反射法探査では,地下深部でやや低角化するもののほぼ一様な東傾斜を示す断層面が推定されている(木村ほか, 2018, 日本地球惑星科学連合大会, SSS08-16).また, 2014年の地表地震断層南端付近を横切る反射法地震探査でも,地表地震断層の地下延長はほぼ一様な東傾斜を呈する(文科省・東北大災害研, 2016, 糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測(追加調査)平成27年度 成果報告書).ただし,同探査結果では地表からの深度約400 mで盆地方向前縁(西方)へ分岐した断層はフラット-ランプ型の地下形状を呈しており,この前縁断層では2014年時の地表変位が確認されていない.このように,神城断層では各区間によって深度1 km以浅での地下構造の特徴に違いがあることがわかった.