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[T15-O-13] 掛川層群と淡路島の大阪層群に狭在する後期鮮新世‐前期更新世境界のテフラの対比
キーワード:テフラ、掛川層群、大阪層群、淡路島
静岡県掛川地域に分布する掛川層群は,鮮新統~下部更新統の連続して堆積している海成層であり,この層序区間の日本における模式層序を構築する上で重要な地層となっている.そのため,これまでに微化石層序,シーケンス層序,テフラ層序等多くの層序学的研究が行われている.テフラ層序については,100層以上のテフラ層が報告されている(水野ほか,1987:里口ほか,1996:柴ほか,2000,2010など).しかし,それらの一部は他の地域のテフラと対比されているが,必ずしも火山ガラスの化学組成に基づき網羅的に検討されているわけではない.筆者らはそれらを系統的に記載し,個々のテフラの特徴を明らかにすることで,鮮新~更新統のテフラ層序を構築することを目的にしている.
今回は掛川層群の中部であり,鮮新~下部更新統に相当する白岩テフラから有ケ谷Ⅳテフラ(水野ほか,1987)の区間を調査した.白岩は房総半島のOkr12と対比され,降灰年代は約2.35Maと推定されている(Tamura et al., 2016).有ケ谷Ⅳは広域テフラのUN-MD2(Tamura et al., 2008)に対比される房総半島のOkr4(Tamura et al., 2016)に対比され,年代は約2.79 Maと推定されている.本発表ではこの区間において約10層のテフラを検討した結果,塩買坂Ⅳ,もしくは塩買坂Ⅴテフラ(柴ほか,2010)(筆者らが観察したテフラがどちらに相当するかわからないため,ここでは塩買坂Ⅳ‐Ⅴと呼ぶ)と下組テフラ(水野ほか,1987)が,それぞれ淡路島の大阪層群に挟在する倭文テフラ,研城ヶ丘1テフラ(水野,1993)に対比でき,広域テフラである可能性が明らかになったので報告する. テフラ試料は岩石学的記載のために,超音波洗浄と篩分けを行い63-250 μmの粒子を取り出した後,火山ガラスの形状,鉱物組成を観察した.屈折率測定には温度変化型測定装置MAIOTを使用した.火山ガラスの主要化学成分はEDX,微量化学成分はLA-ICP-MSを用いた分析を古澤地質(株)に依頼した.
下組テフラと研城ヶ丘1テフラは共に火山ガラスを主体とし,火山ガラスの形態はバブルウォール型,平行型,スモールバブル型を主体とする.火山ガラスの屈折率は下組が1.497-1.499,研城ヶ丘1が1.496-1.499であった.重鉱物は,下組は角閃石が主体であり,研城ヶ丘1はほとんど観察されなかった.火山ガラスの化学組成は,下組テフラはFeOが0.83%,CaOが0.62%,Na2Oが2.91%,K2Oが4.53%であり,研城ヶ丘1テフラはFeOが0.84%,CaOが0.64%,Na2O が3.58%,K2Oが5.01%であり,Na2Oと K2Oは若干違いがあるものの,よく似ている.微量元素も共にBaが250ppm前後,Srが35ppm前後でよく似ていて,対比できる可能性が高い. 塩買坂Ⅳ,Ⅴテフラと倭文テフラは火山ガラスを主体とし,火山ガラスの形態はバブルウォール型,平行型,スモールバブル型からなる.火山ガラスの屈折率は共に1.503-1.505であった.重鉱物は主に角閃石と直方輝石が含まれる.化学組成は,塩買坂Ⅳ,ⅣテフラはTiO2が0.30 %,CaOが1.33 %,Na2Oが3.61 %,K2Oが3.93 %で,倭文テフラはTiO2が0.28 %,CaOが1.28 %,Na2Oが3.64 %,K2Oが3.68 %となっている.微量元素はBaが550ppm前後,Srが120-150ppmとなっており,対比できる可能性が高い.
本研究では,掛川地域の塩買坂Ⅳ‐Ⅴテフラと下組テフラが,淡路島の倭文テフラと研城ヶ丘1テフラに対比されることが明らかになった.研城ヶ丘1テフラはこれまで近畿地方においてしか分布が確認されていなかった(水野ほか,1999)が,掛川地域にも分布が確認できた.倭文テフラは,朝代‐友田2テフラとして関東まで広域に分布することが知られている(高橋ほか,1992:Tamura et al., 2008)が,今回初めて掛川地域でも分布することが明らかとなった.
文献:里口ほか(1996)地球科学,50,483-500. 柴ほか(2000)東海大博研報,2,53-108. 柴ほか(2010)東海大博研報,10,17-50. 高橋ほか(1992)洲本地域の地質,107p. Tamura et al (2008) Qurternary International, 178, 85-99. Tamura et al (2016) Geogr. rep. Tokyo Metrop. Univ, 51, 41-52. 水野(1993)淡路島.市原 実編「大阪層群」,127-141. 水野ほか(1987)地調月報,38,785-808. 水野ほか(1999)地質雑,105,235-238.
今回は掛川層群の中部であり,鮮新~下部更新統に相当する白岩テフラから有ケ谷Ⅳテフラ(水野ほか,1987)の区間を調査した.白岩は房総半島のOkr12と対比され,降灰年代は約2.35Maと推定されている(Tamura et al., 2016).有ケ谷Ⅳは広域テフラのUN-MD2(Tamura et al., 2008)に対比される房総半島のOkr4(Tamura et al., 2016)に対比され,年代は約2.79 Maと推定されている.本発表ではこの区間において約10層のテフラを検討した結果,塩買坂Ⅳ,もしくは塩買坂Ⅴテフラ(柴ほか,2010)(筆者らが観察したテフラがどちらに相当するかわからないため,ここでは塩買坂Ⅳ‐Ⅴと呼ぶ)と下組テフラ(水野ほか,1987)が,それぞれ淡路島の大阪層群に挟在する倭文テフラ,研城ヶ丘1テフラ(水野,1993)に対比でき,広域テフラである可能性が明らかになったので報告する. テフラ試料は岩石学的記載のために,超音波洗浄と篩分けを行い63-250 μmの粒子を取り出した後,火山ガラスの形状,鉱物組成を観察した.屈折率測定には温度変化型測定装置MAIOTを使用した.火山ガラスの主要化学成分はEDX,微量化学成分はLA-ICP-MSを用いた分析を古澤地質(株)に依頼した.
下組テフラと研城ヶ丘1テフラは共に火山ガラスを主体とし,火山ガラスの形態はバブルウォール型,平行型,スモールバブル型を主体とする.火山ガラスの屈折率は下組が1.497-1.499,研城ヶ丘1が1.496-1.499であった.重鉱物は,下組は角閃石が主体であり,研城ヶ丘1はほとんど観察されなかった.火山ガラスの化学組成は,下組テフラはFeOが0.83%,CaOが0.62%,Na2Oが2.91%,K2Oが4.53%であり,研城ヶ丘1テフラはFeOが0.84%,CaOが0.64%,Na2O が3.58%,K2Oが5.01%であり,Na2Oと K2Oは若干違いがあるものの,よく似ている.微量元素も共にBaが250ppm前後,Srが35ppm前後でよく似ていて,対比できる可能性が高い. 塩買坂Ⅳ,Ⅴテフラと倭文テフラは火山ガラスを主体とし,火山ガラスの形態はバブルウォール型,平行型,スモールバブル型からなる.火山ガラスの屈折率は共に1.503-1.505であった.重鉱物は主に角閃石と直方輝石が含まれる.化学組成は,塩買坂Ⅳ,ⅣテフラはTiO2が0.30 %,CaOが1.33 %,Na2Oが3.61 %,K2Oが3.93 %で,倭文テフラはTiO2が0.28 %,CaOが1.28 %,Na2Oが3.64 %,K2Oが3.68 %となっている.微量元素はBaが550ppm前後,Srが120-150ppmとなっており,対比できる可能性が高い.
本研究では,掛川地域の塩買坂Ⅳ‐Ⅴテフラと下組テフラが,淡路島の倭文テフラと研城ヶ丘1テフラに対比されることが明らかになった.研城ヶ丘1テフラはこれまで近畿地方においてしか分布が確認されていなかった(水野ほか,1999)が,掛川地域にも分布が確認できた.倭文テフラは,朝代‐友田2テフラとして関東まで広域に分布することが知られている(高橋ほか,1992:Tamura et al., 2008)が,今回初めて掛川地域でも分布することが明らかとなった.
文献:里口ほか(1996)地球科学,50,483-500. 柴ほか(2000)東海大博研報,2,53-108. 柴ほか(2010)東海大博研報,10,17-50. 高橋ほか(1992)洲本地域の地質,107p. Tamura et al (2008) Qurternary International, 178, 85-99. Tamura et al (2016) Geogr. rep. Tokyo Metrop. Univ, 51, 41-52. 水野(1993)淡路島.市原 実編「大阪層群」,127-141. 水野ほか(1987)地調月報,38,785-808. 水野ほか(1999)地質雑,105,235-238.