第76回日本細胞生物学会大会

プレナリー講演・シンポジウム

プレナリー講演
[PS]
"Technologies for look-back-in-time biology"
谷内江 望 (Nozomu Yachie)
大阪大学ヒューマン・メタバース疾患医学研究拠点
ブリティッシュ・コロンビア大学

Starting from a fertilized egg, cells proliferate, pass their genomic information to their daughter cells, and dynamically change their functions to form diverse tissue structures. Throughout development, intracellular and environmental cues trigger patterns of gene expression that govern cell state transitions and produce additional cellular and environmental cues, leading cells to self-organize into functional clusters within spatially distinct areas. How can these processes be investigated? High-resolution molecular snapshots of cells can be obtained using various omics technologies, but these methods require the destruction of the sample, thereby precluding time-course analyses. Live-cell imaging is limited to analyzing only a small number of molecules or cells. To overcome this common obstacle in biology, our research program is pioneering two major fileds in biology: (1) DNA event recording and (2) retrospective clone isolation.

In the idea of DNA event recording, molecular and cellular events of an organism are progressively stored in synthetic “DNA tapes,” like a molecular ticker tape (Science 2022). Such a system allows for the readout of historical molecular expression profiles of many cells using high-throughput single-cell sequencing. We are currently assembling cell engineering, animal engineering, genome editing (Nature Biotechnology 2020) and high-performance computing technologies (Nature Biotechnology 2022) with the landmark goal of mapping high-content cell lineage and cell differentiation trajectories of the whole mouse body development.

Another idea is retrospective clone isolation (bioRxiv 2023.01.18.524633v1). In this concept, cells in a population are first tagged with unique, short DNA barcodes and propagated. A subpopulation is then subjected to a specific assay. After identifying a barcode for a clone of interest that demonstrate a specific phenotype, the same clone, or its close relatives, are isolated in a barcode-dependent manner from the initial population or any other subpopulation stored during the experiment. The isolated clone can be subjected to various experiments, including omics measurements and synthetic population reconstitution assays.

[PS]
“Dynamic regulation of stem cell fate in human epidermis”
Fiona Mary Watt
キングスカレッジ・ロンドン
欧州分子生物学機構


The epidermis is the multilayered epithelium that forms the outer layer of human skin. It is maintained by stem cells that are attached to an underlying basement membrane. Cells undergo terminal differentiation as they detach from the basement membrane and move through the suprabasal epidermal layers to the tissue surface, from which they are shed. Tissue homeostasis depends on a balance between stem cell renewal and differentiation. While many of the molecular regulators of stem cell behaviour have been identified, how they are integrated and change over time are open questions. I will describe how new insights from single cell RNA sequencing of cells isolated directly from the skin, combined with new experimental models, are helping us to understand the combined effects of cell-ECM adhesion and cell-cell contact in regulating epidermal differentiation. 
シンポジウム

[1S-Am (English)] (若干数の演題募集を予定)

学術変革領域A共催
“Prologue to Protein Lifetime Research”
「タンパク質寿命学のプロローグ」
森戸大介(昭和大学) 山野晃史(東京医科歯科大学)
 
RNA-seq解析が全盛期を迎えている。しかしRNA発現と下流のタンパク質発現の相関は実はそれほど高くない。この乖離は翻訳効率のばらつきやタンパク質寿命の多様性(数分~数か月)などに起因している。現在、各種技術の革新によりタンパク質寿命の精密な計測と理解、操作まで可能な時代を迎えつつある。本シンポジウムでは混沌としたタンパク質寿命の世界を切り拓くタンパク質寿命学の創生を提案したい。


[1S-Bm] (若干数の演題募集を予定)
学術変革領域B共催
「フィロスタシス:多細胞休止のバイオロジー
“Philostasis: Biology of Multicellular Dormancy

中西未央(千葉大学) 廣瀬遥香(東京医科歯科大学)
 
哺乳類の発生休止胚、組織幹細胞、潜伏がんなど多細胞組織の活動休止は、さまざまな生物種やタイムスケールで観察され、その生物学的意義も実に多様である。従来、これらの活動休止現象は栄養状態の悪化などによる“結果”であると漠然と認識されてきたが、最新の知見は生物が環境ストレスを克服するため、精緻な細胞間相互作用に基づき、能動的に休止状態に移行している事を示している。本シンポジウムでは、これらフィロスタシス(Philostasis:プログラムされた多細胞の活動休止現象)に関連する最先端の知見とそれを解き明かす技術開発について紹介する


[1S-Cm]
JSTムーンショット目標2大野プロジェクト共催
「「がん自然史」を制御する生体内ネットワーク」
“Molecular, cellular, and interorgan networks controlling “natural history of cancer””
大澤志津江(名古屋大学) 瀬海美穂(京都大学)
 
がんの発生・進展は、多段階的な突然変異の蓄積に加えて、がん原性細胞を取り巻く周囲の細胞・環境との相互作用により制御されることが近年明らかとなり、その仕組みの理解は、難治性がん克服に向けた喫緊の課題である。本シンポジウムでは、未病(がん発症前)から悪性化に至るまでの「がん自然史」に寄与する細胞間相互作用や代謝を初めとした全身性のシグナルに関する最新の知見を紹介し、生体内ネットワークを介したがん制御の原理について議論したい。


[1S-Dm] (若干数の演題募集を予定)
「ゴルジ体ゾーン:ゴルジ体層板内に存在する機能領域による生体機能制御」
“Organelle zones in the Golgi: Regulation of biological functions by functionally distinct regions in the Golgi cisternae”
後藤聡(立教大学) 吉田秀郎(兵庫県立大学)
 
ゴルジ体の各層板は一見一様に見えるが、各層板の中には物理的に異なる区画(ゾーン)が複数存在し、それぞれ異なる機能を分担していることがわかってきた。本シンポジウムでは、糖鎖修飾や小胞形成、エンドサイトーシス、神経細胞の樹状突起形成、脂質輸送など様々な生命機能を制御するゴルジ体ゾーンについて最新の研究成果を報告する。


[2S-Am (English)] (若干数の演題募集を予定)
“Mechanisms of cellular dynamics governing tissue formation - unraveling at the molecular level”
「分子レベルで紐解く、組織形成を司る細胞ダイナミクスの仕組み」
菊池浩二(熊本大学) 山崎正和(秋田大学)
 
組織形成において、細胞は組織ごとに異なる発生プログラムに従って動態を変化させる。こうした変化は組織のアイデンティティーを生み出す上で重要である。細胞の動的な振る舞い、すなわち細胞ダイナミクスは組織内で時空間に制御された生化学的/力学的シグナルに応答することで駆動するが、その分子実態には多くの謎が残っている。本シンポジウムでは組織形成を司る細胞ダイナミクスを分子レベルで紐解く最新研究を紹介する。


[2S-Bm]
学術変革領域
A共催
「物理とイメージングで切り開く超分子クラスターと新しい細胞観
“Advancing understanding of Supramolecular Clusters and Cells through cutting-edge Physics and Imaging
北川大樹(東京大学) 立川正志横浜市立大学

細胞内の機能発現メカニズムを理解するには、分子複合体が動的に相互作用することでさらに高次クラスター化した「超分子複合体」の働きに着目することが重要である。本シンポジウムでは、先進的イメージング技術や物理理論、合成生物学など異分野の研究者が集い、多角的な視点から、細胞内の現場において超分子複合体が集合して機能する未知なる仕組みを議論する。この学際的アプローチにより、細胞内現象に対する理解の飛躍的深化が期待される。


[2S-Cm] (若干数の演題募集を予定)
学術変革領域A共催
「クロススケール計測で推進する細胞生物学」
“Cross-scale Cell Biology”
吉川雅英(東京大学) 仁田亮(神戸大学)
 
細胞内では、液–液相分離に代表されるように数百nm程度の大きさの分子の集まりが、無秩序から秩序を持つ状態へ遷移することで、細胞や生物の運命が決まります。学術変革領域・クロススケール新生物学では領域内共同研究により、様々な細胞内を観察する手法を組み合わせて、このスケールの現象にアプローチしてきました。本シンポジウムでは、その成果を共有し、解決すべき問題を議論できればと考えています。


[2S-Dm] (若干数の演題募集を予定)
「細胞間コミュニケーションにおける細胞表面突起群の予想外の役割」
“Unexpected functions of cellular protrusions for inter-cellular communications”
井上尊生(ジョンズホプキンス大学) 末次志郎(奈良先端科学技術大学)
 
細胞表面には、微絨毛、フィロポディア(糸状仮足)、ブレブ膜、スパイン、トンネリングナノチューブ、など、および、シリア(繊毛)や血小板前駆体突起、神経軸索などのアクチンおよびチューブリンの再構成に依存した様々な細胞突起がある。これらの細胞突起群は、細胞表面に形成され、細胞の移動や周囲の環境の検知などに関与する構造と考えられてきた。ところが、近年の様々な知見は、細胞突起は、細胞間のコミュニケーションを担う構造でもあることを示した。細胞間のコミュニケーションにおいては、神経細胞間のシグナル伝達のみならず、トンネリングナノチューブのように直接物質を細胞間でやり取りすること、さらには、シリアや微絨毛およびフィロポディアでは、脂質膜小胞である細胞外小胞が放出されること、も明らかになってきた。細胞突起群は、細胞の表面に存在する「構造体」から、切断なども含む動的な「細胞間コミュニケーション」を担う構造体として再解析が進んでいる。本シンポジウムでは、様々な細胞突起などの膜構造の研究を紹介し、その共通点と相違点を明らかにすることを目指す。


[2S-Aa (English)] (若干数の演題募集を予定)
学術変革領域A共催
“Mechanochemical crosstalk in multicellular movement during development”
「発生における細胞集団運動を創発するメカノケミカルクロストーク」
鈴木孝幸(大阪公立大学) 橋本秀彦(大阪大学)
 
発生過程では多細胞運動によって組織や器官の形づくりや恒常性の維持が行われる。これまでの研究から遺伝的プログラムを基盤とした細胞内、細胞間のシグナル伝達によって多細胞運動パターンがどのように形成されるかが明らかとなってきた。一方で、分子-細胞-組織の階層間で力学作用と化学反応がどのようにダイナミックに相互作用しながら自己組織化的に多細胞運動パターンを創発するかは十分に理解されていない。本シンポジウムでは、発生における様々な動物、組織の秩序だった多細胞運動パターンの創発の仕組みを比較することでその共通性と多様性の理解を深めたい。


[2S-Ca] (若干数の演題募集を予定)
国際先導研究共催
「非モデル生物とイメージング」
“Non-model organisms and imaging”
植田美那子(東北大学) 佐藤良勝(名古屋大学)
 
近年は遺伝子解析技術が急速に発展し、非モデル生物のゲノム解読も比較的容易になってきた。これを受けて、多様な生物種を用いた研究が進んでいるが、対象とする生物の特異的な組織や細胞・時空間動態といった事象をつぶさに観察する手法はいまだ発展途上である。そこで本シンポジウムでは、さまざまな生物における特異的な事象を観察する方法について考えるべく、顕微鏡技術の進展や化学プローブの開発など、最新研究について紹介する。


[2S-Da]
自然科学研究機構生命創成探究センター共催
「オルガネラの時空間アトラス編纂」
“Spatiotemporal Atlas of Dynamic Structure and Function of Organelles”
椎名伸之(自然科学研究機構) 小迫英尊(徳島大学)
 
近年、膜オルガネラの研究に加えて、非膜オルガネラの同定にも大きな進展があり、オルガネラ研究は急速に発展している。特に、液-液相分離した非膜オルガネラの解析には新たなアプローチが求められており、これが膜オルガネラ研究にも新たな視点をもたらすことが期待される。本シンポジウムでは、分子細胞生物学、イメージング、空間オミックスなどの最新の研究を通じて、オルガネラの構成、再編成、ダイナミクス変換、機能発現制御に焦点を当て、将来の研究展望を議論する。


[3S-Am (English)] (若干数の演題募集を予定)
学術変革領域A共催
“Chromatin structure and genome modality”
「クロマチン構造を制御するゲノムモダリティ」
前島一博(遺伝研) 西山朋子(京都大学)
 
近年、イメージング技術やシーケンス解析技術の急速な発展にともない、これまで見えていなかった細胞のクロマチン構造が、様々なスケールで明らかにされつつある。本シンポジウムでは、これらの新しいクロマチン構造とその可塑性、さらにクロマチン機能との関わりについて、数理学、生化学、細胞生物学、情報生物学を含む幅広いアプローチから多角的に考察し、議論する。


[3S-Bm] (若干数の演題募集を予定)
「生体の恒常性とその破綻:生体内シグナルから紐解く生命現象と疾患」
“Homeostasis in Living Organisms and Its Dysregulation: Unraveling Life Processes and Diseases through Biological Signals”
橋本あり(北海道大学) 小根山千歳(愛知県がんセンター研究所)
 
生命体は多様な細胞で構成され、内的・外的環境変化に適応するために細胞内及び細胞間において複雑かつ精巧なシグナルが働き、恒常性が維持される。一方、それらの制御破綻を介して様々な疾患の発症・悪性化に繋がる(癌や慢性炎症等)。本シンポジウムでは、異なる専門分野の研究者から話題を提供して頂き、生体の恒常性維持機構とそれによる疾患との多様性並びに普遍性について統合的理解を追究する。


[3S-Dm]
「脂質の視点から切り拓く新オルガネラ生物学」
“Pioneering a new era of organelle biology from a lipid perspective”
田村康(山形大学) 中津史(新潟大学)
 
これまでタンパク質の機能解析を中心に進められてきたオルガネラ研究を脂質の視点で見つめ直すと,オルガネラ膜を構成する脂質分子はどのように合成,輸送,分解,再利用されるのか,オルガネラ膜特異的な膜物性が,オルガネラ機能にどう影響するのか,など多くの未解決問題が浮き彫りとなる。本シンポジウムでは,これら重要課題の解決に大きく貢献するオルガネラ膜物性・分析の最新技術や,膜脂質の視点から明らかになってきたオルガネラ動態・機能の最新研究について紹介する。


[3S-Aa (English)] (若干数の演題募集を予定)
新学術領域共催
“Properties of biomaterials and their roles in cell fate decision”
「バイオ物性と細胞運命決定」
川口喬吾(理化学研究所) 小林徹也(東京大学)
 
Biosystems, abundant in information processing units, not only adhere to but also leverage the physical laws shaping cellular materials. This session aims to bring together leading researchers to delve into the physical aspects of biomaterials in information processing, with a particular focus on cell fate decisions. It will showcase innovative methods for understanding and manipulating both multicellular and intracellular dynamics, thereby bridging the gap between biology and physics.


[3S-Ba]
JST-CREST共催
「母胎連関の分子細胞生物学」
“Molecular cell biology of maternal-fetal interphase”
豊島文子(京都大学) 三原田賢一(熊本大学)
 
哺乳類は、母体内で子孫を十分に成長させる生存戦略を有している。この哺乳類の胎生機構は、母体から胎児への安定的な栄養供給やガス交換を可能とする進化的優位性を持つ。これまでの哺乳類胎児発生の研究では、胎児自律的な分子機構に焦点が当てられてきた。一方、近年、母体との連関に着目した胎児発生の研究領域が広がりつつある。また、母体を取りまく環境要因と胎児発生の関連も指摘されている。本シンポジウムでは、母胎連関の分子細胞生物学的な理解を目指した研究を推進する先生方にご講演いただき、哺乳類胎児発生の新たな基本原理と医療への応用展開について議論したい。


[3S-Ca]
学術変革領域A共催
「多細胞生物の自律性を支える細胞間コミュニケーション」
“Intercellular communication that supports the multicellular autonomy”
藤田恭之(京都大学) 諸石寿朗(熊本大学)
 
多細胞生物は自発的に組織を構築し、その恒常性を維持するという自律性を備えている。近年のシングルセル解析技術の進展により、多細胞生物が想像以上に多種多様な細胞集団から構成されることが明らかになり、このような多様性を基盤として、組織の自律性を支える様々な様式の細胞間相互作用が調べられてきた。本シンポジウムでは、異なる細胞種間あるいは同一カテゴリーに属する細胞間において繰り広げられる様々な細胞間コミュニケーションの様式とその動作原理に関する最新の知見を紹介し、多細胞生物の自律性を支える仕組みについて議論したい。


[3S-Da] (若干数の演題募集を予定)
「オルガネラの「量」と「質」の恒常性維持とその破綻」
“Maintenance/disruption of organelle “quantity” and “quality””
潮田亮(京都産業大学) 柳谷耕太(大阪大学)
 
オルガネラの量と質の恒常性は、厳密な制御によって維持される必要がある。一方、発生や細胞分化などの過程では、その恒常性システムが意図的に解除され、オルガネラの量と質が大きく変動することが知られている。また、その恒常性システムの破綻は様々な疾患や老化の原因となることから、そのシステムの理解は重要である。しかし、オルガネラの量的・質的変化を追跡・評価できる技術にこれまで制限があり、細胞恒常性を理解する上での障壁となっていた。新たなパラメーターからオルガネラの量・質の評価に挑むエキスパートが、細胞恒常性の謎に迫る。