日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Ap] 栄養成分(タンパク質,炭水化物,脂質,ビタミン,ミネラル)

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 A(S2)会場 (3F N321)

座長:菅原 達也(京都大学)、友寄 博子(熊本県立大学)、宗 伸明(佐賀大学)

17:15 〜 17:30

[2Ap-09] ミズクラゲの主要コラーゲンおよびその構成サブユニットの生化学的特性

*田邉 瞭太1、水田 尚志1、細井 公富1、横山 芳博1 (1. 福井県大・海洋生資)

キーワード:コラーゲン、未利用水産資源、タンパク質

目的:クラゲ類のコラーゲンは現在化粧品や研究用試薬等に利用されている.我々のグループでは内因性プロテアーゼの活性によりクラゲ組織を自己消化させ,同時にコラーゲンを可溶化する方法を確立した.これにより得られる内因性プロテアーゼ可溶化コラーゲン(ESC)はSDS-PAGE上で脊椎動物Ⅰ型コラーゲンとは異なる特異的なパターンを示すが,これに含まれるコラーゲン分子種ならびに各構成サブユニットの性状については殆ど知見がない.本研究ではミズクラゲからESCを回収し,主要コラーゲン分子種の精製とサブユニット組成の解明を目指した.
材料と方法:生鮮ミズクラゲを凍結し,低温で自己消化させESCを得た.ESCまたはその熱変性物を陽イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過に供し,主要分子種または構成サブユニットを精製した.得られたコラーゲンやそのサブユニットをSDS-PAGE,アミノ酸分析またはペプチドマッピングに供し,それらの特性評価を行った.
結果と考察:ESCはSDS-PAGEにおいて150-160K,80-90K,50K,25Kに明瞭なバンドを示し,コラーゲンに典型的なアミノ酸組成を示した.ESCを陽イオン交換クロマトグラフィーに供した結果,ESCを構成する主要コラーゲン分子種は上記6成分をいずれも含むことが分かった.変性させたESCを陽イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過に供した結果,画分A(25Kに1本),画分B①(50Kに1本),画分B②(80Kに1本),画分C(150Kに1本),画分D(80-90Kに2本),画分E(160Kに1本)に分離した.アミノ酸分析では画分Aと画分B①はグリシン含有率が低く,非コラーゲン性の領域を含むことが示唆された.以上より,ESCに含まれる主要コラーゲン分子種が単離され,これを構成する一部のサブユニットは非コラーゲン性の領域を含む可能性が示された.