日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Ap] 栄養成分(タンパク質,炭水化物,脂質,ビタミン,ミネラル)

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 A(S2)会場 (3F N321)

座長:菅原 達也(京都大学)、友寄 博子(熊本県立大学)、宗 伸明(佐賀大学)

17:30 〜 17:45

[2Ap-10] 加圧CO2を利用した減塩魚醤の作製とその品質評価

*庵原 瑠夏1、田川 丈真1、田浦 嘉隆1、野間 誠司1 (1. 佐賀大学)

キーワード:魚醤、加圧CO₂

【目的】魚醤は魚介類を高塩濃度下(NaCl>20%)で発酵させて製造する液体調味料である。一方、CO₂を密閉容器中で水(を含む食品)に加圧溶解させると、酸性化や嫌気化等が生じる。この環境下では、微生物の増殖が抑制されるため、魚醤の発酵過程を加圧CO2下で行えば減塩下でも腐敗せずに魚醤を作製できると期待される。そこで本研究では、複数の魚種を原料として加圧CO₂下で減塩魚醤を作製し、その品質を調べた。
【方法】4種類の魚(イワシ、ワラスボ、アジ、コノシロ)をそれぞれ単独もしくは混合したものを原料とした。これらのミンチとNaCl水溶液を重量比 1:1で混合し、加圧CO₂・減塩下(5 MPa、NaCl終濃度10 %:pCO₂魚醤)および従来法(大気圧下、NaCl終濃度 20%:大気圧魚醤)で30℃、2か月間発酵させて魚醤を作製した。作製した魚醤について中温細菌数、遊離アミノ酸量、有機酸量、腐敗性アミン類量、色、香気成分、味、におい等を評価した。また、16S-rRNAアンプリコンシーケンスにより細菌叢を解析した。
【結果と考察】 pCO₂魚醤ではいずれの原料を用いた場合でも共通して中温細菌数が低下し、遊離アミノ酸が増加した。また、薄色化が認められた。また、原料が異なっても共通して腐敗臭は抑制され、出汁様のにおいやにおいの嗜好性が向上していた。さらに、うま味コクも共通して増加した。細菌叢解析の結果、いずれのpCO₂魚醤においても菌数の減少と細菌叢の多様性増加が認められ、pCO₂魚醤に共通する優占種はなかった。pCO₂魚醤で共通する品質向上機構を明らかにするためには、更なる検討が必要であると考えられた。
【謝辞】本研究は科学研究費補助金(20K02406)並びに令和5年度鹿児島大学大学院連合農学研究科先進的研究推進事業支援のサポートにより行いました。厚くお礼申し上げます。