日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Cp] 食品分析

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 C会場 (3F N323 )

座長:氏田 稔(名城大学)、谷 史人(京都大学)、加藤 毅(日本食品分析センター)

16:30 〜 16:45

[2Cp-07] 近赤外線分析を利用したじゃがいも含有グリコアルカロイド量の測定方法の検討

*高見 かれん1、小木曽 加奈1,2 (1. 長野県立大学大学院健康栄養科学研究科、2. 長野県立大学健康発達学部)

キーワード:じゃがいも、グリコアルカロイド、近赤外線分光分析

【目的】
 ジャガイモ(Solanum tuberosum)は世界中で広く栽培・消費されている食用作物である.ジャガイモに含まれるグリコアルカロイド(ソラニン及びカコニン)は摂取量が一定量を超えると中毒症状を引き起こす.食中毒の防止策としては,緑色部分の除去や未熟なジャガイモの回避など,個人の判断に委ねられている部分が大きい.また,産業的な加工の場合には,安全性を確保するために可食部分の過剰な除去・廃棄が生じ,食品ロスの問題にもつながっている.一方,グリコアルカロイドの既存の測定手法であるHPLCなどの方法では,機械が高額であり,操作が煩雑なこと,有機溶媒の使用による環境負荷が課題とされていた.本研究ではグリコアルカロイドの迅速かつ簡易な定量手法として,近赤外線分光分析を検討した.
【方法】
 検体はポテトサラダ等の加工製造で一般的に使用される品種である「さやか」を選択した.グリコアルカロイドの含有量を増加させるためサンプルに対して520-570nmの緑色光(6200ルクス,(株)あかり産業 CY-TPZ3M)を4日間照射した.対照区としては,暗所で保存したサンプルを用いた.サンプルからの抽出液はTLCで分離した後,標品を用いた検量線から各成分の含有量を算出した.得られた濃度と,近赤外線照射による吸光度スペクトルとの相関を解析した.近赤外線照射には,(株)ナノシード製S-G1装置(900-1700nm)を使用した.
【結果】
 緑色光照射によりグリコアルカロイド含有量が増加したジャガイモサンプルを用い,近赤外線吸収スペクトルとグリコアルカロイド量との相関解析を行った.その結果,900-940nm及び1070-1130nmの波長領域に特異的な吸収ピークが認められた.これらの吸収波長はカコニンのステロイド骨格に由来するArCH基の吸収と一致することから,妥当な結果であると考えられた.