日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Kp] 加工、製造技術

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 K会場 (2F N206)

座長:山田 盛二(サンタ ベーキング ラボラトリー)、西岡 昭博(山形大学)、高村 仁知(奈良女子大学)

16:00 〜 16:15

[2Kp-05] 乳脂肪球被膜(MFGM)含有素材の製パン改良機構の解明

*岡 大貴1、松本 尊1、野田 佳乃香1、長谷川 茂夫2、針生 麻美2、小中 隆太2、野口 智弘3 (1. 東京農大応生・農化、2. ADEKA・食品開発研究所、3. 東京農大応生・食加技セ)

キーワード:製パン性、乳タンパク質、グリアジン

【目的】乳脂肪球被膜(MFGM; Milk Fat Globule Membrane)とは牛乳中の乳脂肪を被覆している膜様物質である.このMFGMを含む乳の特定画分(以下、MFGM含有素材)を製パンに利用すると,比容積の増大,パンクラムのソフト化,歯切れの向上など製パン改良効果がある.これらの詳細なメカニズムを明らかにするため,MFGM含有素材をBligh & Dyer法にて分画し添加効果を検証したところ,リン脂質とタンパク質の複合体が存在する下層画分に製パン改良効果を示した一方,タンパク質を多く含む上層画分は製パン性を低下させた.本研究では両画分の製パン改良効果の要因について明らかにすることを目的とした.
【方法】MFGM含有素材をBligh & Dyer法にて上層・下層に分画した.得られた両分画物のリン脂質量を揃えてそれぞれ小麦粉(強力粉)に加え生地を調製後,水を加え水溶性タンパク質を分画後,SDS溶液を用いて各濃度(0.05~2.0%)におけるタンパク質の溶解性を段階的に溶媒分画した.得られた各画分の溶出タンパク質を定量し,SDS-PAGEにてタンパク質の定性を行った.また,RP-HPLCにて各画分に溶出したグリアジンの各分子種(α/β, γ, ω)を定量した.
【結果】小麦生地の溶媒分画を行ったところ,無添加と比較し上層添加では水溶性画分に多くのタンパク質が溶出し,0.05% SDS画分では溶出量が低下した.SDS-PAGEでは,無添加で0.05% SDS画分にみられた55 kDa付近のバンドが上層添加では消失し水溶性画分に検出された.RP-HPLCにより同タンパク質はω-グリアジンであることが示された.一方,下層添加では無添加と比較し水溶性画分のタンパク質溶出量の低下,0.1% SDS画分の溶出量の増大がみられ,SDS-PAGEにより溶出量の変化はグリアジンであることが示された.