[3Ca] 食品分析

[3Ca-04] 水道水中の残留塩素が顆粒だしの香気成分に与える影響

*浅田 怜志¹、大塚 貴生¹、山本 剛之¹、嶋内 裕¹、中島 泰仁¹ (1. (株)LIXIL)

キーワード：残留塩素、香気成分、顆粒だし、浄水、水道水

【目的】水道水に含まれる遊離残留塩素（以下，残留塩素）は，調理品の風味に影響を与えると言われている．しかし，各調理品に対する個別の影響については不明な部分も多く，前回，我々は残留塩素がハーブティーの香りを損ない，水道水から残留塩素を除去した浄水の方が，本来の香りを楽しめることを報告した．今回は，家庭で広く利用されている顆粒だしに着目して，調理に使用する水の残留塩素の有無や濃度が，顆粒だしで調製した出汁の香気成分に及ぼす影響について調査した．
【方法】 試料には，市販の顆粒だし（鶏ガラ，かつお，こんぶ）の3種類を使用した．試験水には，水道水（愛知県，残留塩素0.6 mg/L）と活性炭で水道水の残留塩素を除去した浄水（残留塩素0.05 mg/L未満）を使用し，それぞれ，沸騰させた試験水150 mLに所定量の顆粒だしを溶解し，攪拌後，ろ紙でろ過した．得られた各出汁の試料液の香気成分をSPMEで捕集後，GC-MSおよびGC-Oで分析を行い，多変量解析を実施した．また，超純水に次亜塩素酸ナトリウムを加えて残留塩素濃度を段階的に0～2.0 mg/Lの範囲で調整した4種類の残留塩素水を使用して，同様に分析した．
【結果】 水道水と浄水で調製した各出汁の試料液を比較したところ，水道水では3種類すべての顆粒だしにおいて，アルデヒド類が浄水よりも多く検出された．また，水道水で調製した鶏ガラでは，GC-Oでカルキ臭（プール様の刺激臭）と評価された成分が，浄水よりも多く検出された．一方，残留塩素水では，上記のアルデヒド類やカルキ臭成分のピーク強度と残留塩素濃度に，それぞれ正の相関が確認され，これらの成分が残留塩素の反応によって生成していることが考えられた．以上から，水道水に含まれる残留塩素は顆粒だしの香気成分に影響を及ぼし，残留塩素を除去した浄水では，顆粒だし本来の香りが楽しめる可能性が示唆された．