日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Cp] 食品分析

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 C会場 (3F N323 )

座長:仲川 清隆(東北大学)、松田 寛子(日本獣医生命科学大学)、間野 博信(あいち産業科学技術総合センター)

16:30 〜 16:45

[3Cp-10] 冷凍及び冷蔵カンパチにおける水溶性物質および筋繊維形態の時間変化

*若山 正隆1、川上 良介1、小倉 立己2、芝野 郁美1、佐藤 美夢2、芦野 祐尋2、加藤 千波2、今村 健志1 (1. 愛媛大学、2. 慶應義塾大学・先端生命研)

キーワード:メタボローム、冷蔵、冷凍、ブリ類

【目的】魚介類において冷凍可能な魚種は一部に限定されている.冷凍時のドリップ発生,食味低下を防ぐため氷冷冷蔵での流通が広く行われるが,漁獲後の冷蔵品と冷凍品,さらに保管期間を経ての物質濃度,筋繊維などの形態が複合的にどう変化するかは明らかではない.カンパチはスズキ目アジ科のブリの仲間に分類される海水魚で全世界の暖海域に分布する.本研究ではカンパチの冷凍品と冷蔵品を材料に経過時間による水溶性物質濃度変化および筋繊維の形態変化を解析した.
【方法】活け越しした愛媛県産カンパチを神経締め後に解体,柵を作成し冷蔵したもの,冷凍後に解凍したものをそれぞれ材料とした.各々をさらに0℃および10℃の保管条件にわけて1週間以上保管し,経時的に柵の一部をサンプリングし-80℃で冷凍後,メタノール:水:クロロホルム系で抽出,CE-MS,LC-MSでアミノ酸類,核酸類,有機酸類,糖類等の水溶性物質を測定した。併せて神経締め後,2日目,7日目の試料の筋繊維形態を二光子励起顕微鏡で観察した.
【結果】カンパチの水溶性物質の濃度変化は神経締め直後6時間以内にATP,ADPが検出されたが以後直ちに減少した.AMPも24時間以内に半減した.イノシン酸は時間経過とともに濃度減少したが10日経過でも比較的濃度が維持された.イノシン,ヒポキサンチンは時間経過とともに濃度増加した.0℃に比べ10℃での核酸類の増減は大きく,アミノ酸類の増加も早かった.冷凍は冷蔵よりも褐変等の見た目の劣化が早く筋繊維の維持性も悪かった.冷蔵では糖リン酸類が長期間維持される一方,冷凍品では解凍後に激減した.以上より冷凍では筋繊維,糖リン酸等の変化が発生するため0℃での保冷が物質・形態変化を起こさない面で重要であることが改めて確認された.