日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Dp] 消化、吸収

2024年8月31日(土) 14:15 〜 16:45 D会場 (3F N324)

座長:小酒井 貴晴(山形大学)、福永 健治(関西大学)、小林 功(農業・食品産業技術総合研究機構)

14:15 〜 14:30

[3Dp-01] マウス結腸における管腔側ゲラニオール刺激によるセロトニンを介した粘膜下神経の興奮

*工藤 龍河1,3、菅原 拓人2、桑原 厚和3、小酒井 貴晴1,2,3 (1. 山形大院理工学研究科、2. 山形大理、3. 山形大地域教育文化)

キーワード:大腸、ゲラニオール、セロトニン、粘膜下神経、Ussing-Chamber 短絡電流法

【目的】大腸における粘膜下神経の興奮は能動的Cl⁻分泌を誘導し,水分泌を促進させ,排便促進や腸管発酵に寄与している.我々は,香料として食品利用されているゲラニオール(GOH)が摘出結腸の管腔側から能動的Cl⁻分泌を促進することを報告した(工藤ら,2022年食品科学工学会東北支部会).しかし,その作用機序は不明なままである.そこで,腸EC細胞から放出されるセロトニン(5-HT)に注目し,管腔側GOHの作用機序を解明した.

【方法】ICRマウス(オス,7-9 週齢)の遠位結腸組織から平滑筋を剥離した上皮組織(粘膜下神経叢を含む)標本をUssing-chamberに装着し,Krebs ringer 緩衝液で培養した.各種阻害剤を含む前培養の30分後に1 mM GOHで管腔側を刺激し,短絡電流値(能動的イオン流)を測定した.血液側培養液へ放出された5-HT濃度はELISAにて測定した.Olfr43/403のmRNA量は定量的PCR法で解析し,Olfr 43/403と5-HTの共局在は免疫組織化学染色で検討した.

【結果】GOH誘導性Cl⁻分泌は,TTX,アトロピンおよびVIP受容体阻害剤(PG97-269)により有意に抑制された.また,管腔側GOH刺激は血液側への5-HT放出を有意に促進し,5-HT3および5-HT4受容体の阻害はGOHの効果を有意に抑制した.さらに,遠位結腸のOlfr43/403のmRNA量は近位結腸より高値であり,5-HTとOlfr 43/403の共局在が一部のEC細胞で認められた.
 つまり、GOHは腸EC細胞から血液側への5-HT放出を促進し,5-HT受容体を介して粘膜下神経を興奮させ,AChやVIPの放出を誘導することで能動的Cl⁻分泌を引き起こす.この知見は、GOHなどの香料化合物が腸内分泌細胞に認識され,腸管神経を興奮させることで生理機能を発揮し得る可能性を示す.